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神経症を治す〜神経症(不安障害)の治療方法

薬物療法への接し方(症例と解説)

パニック障害の治療における薬物療法の役割。

わたくしは、パニック障害に対する薬物療法の役割を、急性期のパニック発作の苦痛あるいはそこから生じる悪循環の緩和という限定的なものであると考えています。そして何よりもパニック障害に対する精神療法の焦点は、呈示した症例の治療経過が示しているように、パニック発作を形成する悪循環過程、即ちパニック発作そのものに向けられるべきです。それがパニック障害によって引き起こされた、行動障害や社会的機能障害への治療へと結びついていきます。そして森田療法の治療者はこの領域で最も経験を積み、治療的成果を上げています。

森田療法における不安の理解とその受け止め方をめぐって。

その具体的治療として、
(1)感情(不安)の特性に関する心理・教育、
(2)治療者の悪循環への介入(2つのモデル)が挙げられます。

(1)感情(不安)の特性に関する心理・教育
まず患者に不安の特性を繰り返し伝えることによって、その不安の対処を容易にし、不安に直面化し、それを受けとめていけるように援助します。以下のようなことを伝えていきます。

a)自己の感情に責任はない。しかし自己の行動にはある程度の責任があること。
b)感情を単一の原因に帰することはできない。したがってその原因探究の試みは、意味がないこと。それよりも悪循環の打破が重要であること。
c)感情の方(法)則(森田)
森田は感情の方則として以下のものを挙げました。
簡略化して述べます。

  • 感情は、そのままに放任し、あるいは自然発動のままに従えば、その経過は山型の曲線をなし、ついには消失する。
    不安などの感情は自然のままに放置できれば、それは流動し、やがて消失する。この感情の流動・変化を体験するためには、感情をめぐる悪循環の打破、恐怖・不安への踏み込み(恐怖突入)が必要である。
  • 感情はその感覚に慣れるに従い、その鋭さを失い、次第に感じなくなってくる。

(2)不安に対する態度の変換 —2つの治療モデルに基づいて—
1つは回避行動から健康的な行動、行為への変換です。これを行動体験モデルと呼びます。もう1つは自分の不安、恐怖をしっかりと見つめ、受けとめ、体験することです。これを感情体験モデル(受容モデル)と呼びます。わたくしはこれらのモデルを適宜提示しながら、患者の悪循環を打破し、クライエントの心理的、行動的変化を援助します。
パニック障害のクライエントにはわたくしはまず行動体験モデルを提示する。不安・恐怖を回避し、それを何とか軽減しようとしている人たちに今までと違った行動、行為を提案するのです。原則的には、「まずは症状を持ちながら、現実の必要な行為を行うこと」「その行為を通して何が得られるか、体験すること」を提案する。それには、当然恐怖に直面すること、恐怖そのものへ入り込むことが必要となります。そこで患者には、不安・恐怖が当然起こるものと思い定めること、自分でその感情を操作しようとしないことが助言されます。
つまり不安、恐怖などの苦痛に満ちた感情を排除しないで、それをむしろ自分で感じ取り、付き合うことを助言するのです(感情体験モデル)。さてこのようなモデルに基づいたパニック発作に対する介入が、どのような結果を生んだかは、Aさんをみていただければお分かりだと思います。

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