症状別アドバイス集

普通神経症の部屋

「“時間”を味方につけてみましょう」 '18.3 

Mさんは体調不良になると、なにか大きな病気ではないかと不安になり、またその不安を解消すべく全力でいろいろな方面から原因を調べるけれども不安はなくならず体調も悪い、といったことで悩んでいらっしゃるということですね。

医師の立場から少しお話ししたいと思います。医師は患者さんを診察する際、体調不良の原因として、かぜ症候群といった自然に回復する病気から、癌や免疫疾患等の命に関わる病気まで、幅広い病気を鑑別に上げて診察を行っています。Mさんが書き込みされている通り、医師も完璧ではないでしょう。臨床経験があり優秀な医師は、自分が完璧でないことを自覚しており、初めて会った患者さんをその日に完璧に見立てるのは不可能であることを知っています。そこで、どんな工夫をしているかと言うと、“時間”を味方につけることです。自然回復が見込まれる患者さんの場合は、再診までの間隔を空け、この患者さんはなにか病気が隠れていると判断すれば、再診までの間隔を短くします。いわゆる“経過観察”というものです。“経過をみる”ということも立派な治療であります。

Mさんは体調不良になり医師の診察を受けた際、100%の保証を求めていないでしょうか?実は医師も常に不安を抱えています。“時間”を味方につけて日々の診療が適切に行われるように工夫しているのです。次回診察を受ける際に医師に聞いてみるとよいかもしれません。医師と信頼関係が築けるとよいと思います。

それから、Mさんは不安になるとインターネットで体調不良の原因を調べられるのですね。インターネットは便利な道具ですが、嘘も本当も混じっています。薬のことも賛否両論いろんな考えがインターネットには載っていると思います。Mさんもご自覚されていると思いますが、調べれば調べるほど不安は増強するものです。インターネットに割く時間を○分と決めて切り上げ、不安な気持ちはそのままに、その日やるべきことに意識を向けられるとよいでしょう。

森田療法の言葉を借りれば、不安の裏には生の欲求があるということ、不安を抱えながらも建設的な生活を実践することにより、生の欲求が賦活されるということです。

Mさんは、病気の不安がもし無かったら何をしたいですか?“時間”を味方につけ、生の欲求を発見し生かすことができるようになれば、きっと生き生きとした生活が実現できるでしょう。そう願っています。
(鈴木優一)

「死を恐れるのは生きたいためである」 '18.2 

Hさんは、もともと心配性であったのが、お子さんを出産されてから病気が非常に怖くなり、実際毎日身体のどこかしらに痛みや違和感があるとのことでした。それゆえ、症状をインターネットで一日中調べ、悪い病気と繋げては落ち込んでしまう毎日に悩んでいると書き込まれています。

出産後にこうした悩みが強くなっているのは、お子さんのためにも自分がここで病気になったら大変・・・という気持ちがあるからではないでしょうか。つまり、母親としてしっかりしなくては、健康でいなければ・・・という気持ちが強くなった分、「万が一・・・」と心配がつのっているのかもしれませんね。心配になると、どうしても意識は体調の変化に注意が向いてしまいます。おそらくHさんの場合も、朝起きた瞬間から体調をチェックし始めて、逆に体調の些細な変化に敏感になってしまい、ますます違和感を強めてしまっているのではないでしょうか。森田はこうした注意と感覚がお互いに強め合ってしまうことを精神交互作用と呼んでいます。まさに不安ゆえに一層体調不良を探し出し、かつそれを強めてしまうというわけですね。

ではどうしたらいいでしょうか。森田は「死は恐ろしい。恐れまいとしても無理である」「少年時代から四十歳頃までは、死を恐れないように思う工夫をずいぶんとやってきたけれども、『死は恐れざるを得ず』ということを明らかに知って後は、そのようなむだ骨折りをやめてしまったのであります」と述べています。ではどうして私達は死ぬことが怖いのでしょうか。森田は「死を恐れるのは、生きたいためである」と答えています。生きたい、健康に過ごしたいという欲求があるからこそ、死はとてつもなく恐ろしいものになってしまうのです。とはいえ、私達の命には限りがあるものです。だからこそ、1回きりの人生をどのように生きるのかが重要になってくるということでしょう。

Hさんの場合も、母親になり、大事なお子さんを授かったからこそ、これまで以上に健康でありたい、病気が怖いという意識が強まったのだと思います。では病気にならないためにはどうしたらいいのでしょう。残念ながらこの問いに対する『絶対、確実』な答えはありません。規則正しく、バランスの良い栄養を取って、適度に運動をして・・・という心がけが出来るくらいでしょう。折角大事なお子さんを授かったにもかかわらず、大方の時間を病気の不安とそれを払拭するためのネット検索に費やしてしまったら、お子さんと心を通わせ、触れ合う時間はなくなってしまいますよね。

お子さんを大切に思う気持ちを、「今しかない」お子さんとの時間に活かしてあげることが大事なのではないでしょうか。不安材料を探してばかりでは自分でストレスを生み出すことになってしまいます。お子さんのために出来ることを実行し、共に笑い合い、ご家族と共に子供の成長を喜ぶことこそが、Hさん自身の心身の健康に最も効果的だと思います。
(久保田幹子)

「過敏性症候群〜診断は同じでも病状によって対応は異なります〜」 '18.1 

今回はお二人の方が過敏性腸症候群での悩みを挙げられていたので、それについて取り上げます。同じ診断でも病状によって対応は異なります。

まずはMさんですが、かなり大変な状況ですね。体調不良に加え、子育て・お父さまの看病などに追われていらっしゃいます。過敏性腸症候群だけでなく、体の痛みも出ており、さらに気持ちも落ち込んでいるということですね。過敏性腸症候群は自律神経の失調症状ですが、このような症状が長引くとうつ状態に至ることがあります。Mさんの場合、うつ状態かどうかはわかりませんが、まずは負担を軽減したほうが良いでしょう。ご主人といると落ち着くという事ですので、ご主人と共にお子さんの子育て、お父様の看病について負担が軽減できないか考えてみてはどうでしょうか。家族の中で負担軽減が難しい場合は役所での福祉サービスなどが利用できるかもしれませんので、お二人で相談に行かれるのもよいかと思います。主治医にも眠れないことや気持ちの落ち込みについて伝えてみましょう。

落ち込みが多少改善してきましたら、森田療法を生活に活かしていけます。お腹の不調、身体の痛みがありながらもやりたいことがあるだろうか、など自分の中の「〜したい」を大切に感じてください。Mさんはとても真面目な方なので今はおそらく人のために生きていらっしゃいますが、自分のための時間も大切にしてください。自分を大切にすることが、家族にとっての喜びにもつながります。やりたいことを実現できていくと、「不快なものを取り除きたい」生活から「楽しいことを行う」生活に変わっていくでしょう。

もう一人はSさん、高校生ですね。「おならが気になる」、これは思春期の方で悩まれている方が多い症状で同じく過敏性腸症候群の一つの型です。 一般的に静かな状況になると「おならをしてはならない」という気持ちになる →おならをしないため精一杯努力するようになる →それにより注意が集中して益々おならが出ないか気になる →緊張するとお腹の動きが活発になり、おならが出やすい状況になる(自然な現象です) 上のような状況はまさに森田療法の「注意の集中と身体症状の悪循環」ですね。まずおならが出るとどうなってしまうのが心配かを自分に問いかけます。おそらく「周囲の人に迷惑をかけないか」「自分が嫌われるのではないか」という心配・恐怖が背景にあるかと思います。しかしその恐怖の裏には必ず「生の欲望」があります。「人と仲良くしたい」「人に好かれたい」などの気持ちがあるからこそ、症状を気にするのです。「人と仲良くしたい」気持ちは失くせないため、症状が気にしないのは難しいでしょう。気になりながらも、目の前の行動を避けないことがポイントです。おならは自然な生体反応なので、コントロールすることはできません。おならを鳴らしながら自分のやりたいことを避けずにやっていってください。
(大久保菜奈子)

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