症状別アドバイス集

普通神経症の部屋

「愛情深い素敵なお母さん」 '17.12 

Dさん、Kさんのお二人が心気症について書かれていました。Kさんは子どもが生まれてからとのことです。不安に駆られるのはとてもつらいですよね。何度受診しても(検査を受けても)繰り返し不安になってしまうなんて、やっぱり自分はおかしいと思っていらしたりしませんか。Aさんがおっしゃっていたように「健康を願っているからこそ不安は大きくなる」。お二人とも異常ではないし、愛情深い素敵なお母さんたちなのだと思います。

不安な時には何がそんなに不安なのか、すぐに答えは得られなくとも、まず一旦自分に問いかけてみましょう。自分が何を恐れているのか、不安の内容がわかってくるとその気持ちを抱えやすくなっていきます。もし病気になって子どもの世話ができなくなることが不安なのだとしたら、子どもが呼びに来たら考え事をしていても手を止めて対応したり、今の時間を大事に過ごせるといいですね。気になることがあると、そのことに気を取られることは誰にでもあります。例えば、楽しかった思い出をふと思い出したり、嫌なことがあるとそれが繰り返しよみがえってきたり、そういう経験はありませんか?嫌な気持ちを早くなくそうとしたり、蓋をして出てこないようにしようとすると、そこにより注意が行ってしまいます。元気に過ごせることが今のあなたにとって特に大事なことだとすると、そのことが頭をよぎるのは致し方ないことなのです。よぎる=異常ではありません。

よぎることがどうしても耐えられないとすると、身体の不安を感じることがどうしてそこまで辛いのかをちょっと考えてみましょう。

また心気症になる方々はもともととてもエネルギーがあり、そのエネルギーの向け先に困っている方たちでもあるように思います。必要なことを行いながら、どこにエネルギーを向けているときに生き生きするのか、元気が出るのか、向け先を探していけると良いです。
(今村祐子)

「耐えるだけでなく、どうせやるなら」 '17.11 

Hさんが困っています。職場に勤続年数が長い年上の方がいて、管理職でもないのに口を出してきて、常に視線を感じるためストレスになっているようです。

口うるさい人を気にしながら仕事をするのは大変だと思います。あと4か月の辛抱とのことですが、ここは耐えるだけでなく、どうせ続けるなら森田療法の考えに沿って、直面しなければならない辛いことにも付き合う術を身につけてはいかがでしょうか。相手の方が好き嫌いを表に出し接してくるとのことですが、自分は気分に(流されそうになるのをこらえて)流されずに仕事と割り切り、「教えて下さるのはありがたい」とプラスの面でとらえていることもあるので、外相を整えて接してみてはいかがでしょうか。「耐える」とは違う体験が出来ると思います。

また日頃から娘さんのてんかんの出現を気にしているなか、体調不良と不眠が出現し、さらには息子さんの手術もあるとのことで大変な状況だと思います。そんなときには、「落ち込む日が来るのではないかと怖いです」と書かれていますように、(マイナス面)に目が行くものです。こういう時こそ(あれもこれもとならないように)優先順位をつけてひとつひとつやっていくことです。大変でしょうが頑張って下さい。
(矢野勝治)

「ちょっとでも動いてみる」 '17.10 

Nさんは、約20年、うつ病の治療を受けながらお仕事を頑張ってこられました。その後、少し負担の少ないお仕事に転職をされたようですが、最近、些細な不安や将来への不安が強くなったり、頭痛、胃痛などの身体症状が頻繁にでるようになったりして、現在は入院をされています。

うつ病を患いながら、ハードなお仕事を続けてこられて、とても立派なことだと思います。それだけNさんには力があるということの証ですね。それだけに、現在の状態はギャップも大きくて辛いことだと思います。現在は入院治療を受けておられるということですが、その後はいかがでしょうか。主治医の先生とも良く相談されているとは思いますが、Nさんの現在の症状がうつ病の悪化によるものだとすれば、まずはしっかりと休息や薬物療法を受けることが必要だと思います。

ただ、それらの症状がうつ病の悪化からくるものでないとすれば、もしかしたら、Nさんが少し楽な仕事に転職されたことで、自分自身に注意が向く時間が増えたことがきっかけで、それらの症状にとらわれてしまっているのかもしれません。というのも、転職前は先々の心配やご自分の体に注意がいかないほど忙しく、充実していた生活をされていたものが、比較的時間に余裕が出来たことで、先々のことや、自分の身体に注意が向きやすくなってしまったからかもしれないからです。

そうであるならば、森田療法の治療方法でもある、「今、現在の生活を充実させていくこと」がそれらの症状にとらわれていることからの脱却に繋がると思います。入院中ということなので、出来ることは限られてしまうかもしれませんが、Nさんが元々好きだったこと、やりたかったこと、あるいは今やれそうなこと、どんな些細なことでも構いません。まずは少しだけ、手をつけてみてはいかがでしょうか。ちょっとでも行動する(動く)ことで、気分が変わってくるかもしれません。とても大変な状態ではあると思いますが、元来のNさんの力であれば、出来るはずです。是非ともチャレンジしてみてくださいね。
(谷井一夫)

「自律神経を鍛えるとは」 '17.9 

Kさんは様々な自律神経症状に悩まされているようです。特に今年のように不順極まりない天候は、Kさんの心身に大きな負担を与えているのではないかと思います。

ところで、人間をはじめとする生命体は良く出来たもので、外的環境が変化すれば(例えば暑くなれば、汗をかいて体内から熱を逃がすなど)、その変化に呼応して、心身が順応しようとします。その際、これらの機能を支える神経系が自律神経であり、生命活動を円滑に保つ上で欠かせないものなのです。「自律神経が乱れ・自律神経失調症」などという言葉をよく耳にしますが、これは自律神経が故障して駄目になっている訳ではありません。環境の変化に対し、その反応が過敏であったりやや遅れたりするなどして、心身の違和感が増長している場合に、この様な言葉が用いられます。ですから、生活の送り方を見直すことで状態の安定を取り戻せる可能性があるのです。

このような乱れを増長させる要因にはどのようなものがあるでしょうか?その一つに心身の慢性的な疲労が挙げられます。二つ目には過度な緊張があるでしょう。特に現代社会は、人間に対し過酷な環境(例えば労働環境など)への順応を容赦なく強いてきます。疲弊や緊張を繰り返すことで、上述の自律神経の乱れが引き起こされる危険性を、我々は常にはらんでいるのです。

これらの背景を踏まえ、自律神経の乱れを緩和する対策の要は何とっても心身の休息に尽きます。特に不眠の解決は自律神経の安定の上で、最大の近道と言えるでしょう。そのため、あまりにも強い不眠などについては、睡眠薬などの一時的な内服は検討に値すると思います。そして、過緊張は心身の冷えをもたらし、自律神経のバランスを崩すことにも繋がります。胃腸を温めること、軽めの運動から新陳代謝を上げること、そして就寝前のリラクゼーションなどは、心身全体の冷えを緩和するだけでなく、自律神経の活動を安定させ、免疫力の回復にも一石を投じると言われています。

最後に、人間は自律神経を自分の意志でコントロールすることは絶対にできません。まさに人間の意志から自律しているのです。そうだとすると、自律神経症状に悩み、「何とかしたい」と思いを強めることは、却ってその身体症状へのとらわれを作り出し、過緊張を増長させることとなってしまいます。つまり、自律神経症状への不安をそのまま持ちこたえながら、身体を常日頃から労わることこそが、自律神経を鍛えることに通ずるのです。今はKさんにとって、しんどい日々でしょうが、新たな展開があることを心から願っております。
(樋之口潤一郎)

「不調を"がまんすること"と"あるがまま"の違い」 '17.8 

Oさんは目の奥の締め付けられる感じ、首筋の違和感、倦怠感など「とにかく体調が悪いのです」と書き込まれています。「23歳の時に通勤電車の中でめまいを起こして以来、また起きたらどうしようと不安が先に来て、症状の波はありますがいつも体調が悪い状況です。」とのこと。その症状を持ちながら、約30年間会社員として働いてきたというのは、大変な、尊敬すべきことだと思います。「気力だけで頑張っています」とも書かれています。

書き込みから、身体の不調にとらわれる一方で粘り強い、森田神経質の方なのだと感じます。Oさんはお仕事を続ける中で、上司、同僚、お客さん・・多くの人に関わり、お仕事に取組み、工夫もこらしたはずです。逆にそうでなければ30年お仕事を続けてくることはできなかったはずです。今一度、そうした関わってきた人やものごとに目を向けてみましょう。 そして苦しい中ではありますが、今目の前のことを見つめて、心に浮かぶ「感じ」をお仕事に生かしてみてください。

さて、森田療法の診療をしていると「あるがままにするって我慢するってことですか?」と聞かれることがよくあります。不安や症状をあるがままにすることには、やはり耐えること、我慢することも含まれるもの。しかし「我慢」は自分の内側に注意が向いた状態ともいえます。 一方不安や症状を「あるがまま」にすることは、ものそのものになり、目的に沿っていくことを含みます。

他の人が元気に活発で生き生きとしているのを見ると自分と思われることも、生の欲望の強さを表わしています。体調への不安は「生き生きと生活したい」からではないでしょうか。持ち前の粘り強さを生かし、「生の欲望」を発揮していってください。
(塩路理恵子)

「動悸、吐き気は何かきちんとしたい気持ちのサイン」 '17.7 

H様、せっかく念願の仕事に4月からついたのに6月から動悸と吐き気に悩まされさぞお辛いとお察しします。

念願の仕事について約二か月がたち、もしかしたら一見順調に見えても実はH様は他のスタッフが辞めたりして仕事で別の役割が増えたりしていませんでしょうか?そのせいであるいは御自身のがんばろうとしすぎているところもありませんでしょうか。神経質性格の方が、「こうあらねばならぬ」「頑張らないと」との想いが強くなりすぎ、周りの人へ頼らず自分のみで頑張りすぎていることが多くあります。

というのは、このような動悸や吐き気が出てきたということの自覚はしていないでしょうけど何かしらの不安が大きくなったから出てきているのではないかと推測します。不安が大きくなった要因に以上に挙げたことを考えました(もちろん違っていたらごめんなさい)。H様にとって嫌でなく念願の仕事とのことなので、不安が増えたということはその仕事をきちんとしたい気持ちが強まったからではないかと森田療法では理解します。

森田は、「神経質の症状は欲望の過大から」と言っています。また、森田は治療について「一方にはその恐怖または苦痛に対する態度と、一方にはその自己が本来に具有する欲望の自然の発動をうながして、苦痛と欲望との調和の心境を会得させ、自己の現在の境遇、降りかかる運命に対して、絶対服従の心境を会得させることにある」と述べています。ここで誤解してほしくないのは症状を我慢して仕事場にいることを推奨しているわけではないということです。周りの人へわからぬことを尋ねたり、頼るところは頼ることが大事になってきます。

きちんと仕事をしたい気持ちが強いから不安が強まり、動悸や吐き気が出てきたので、この不安はある意味あってよいものではないでしょうか。このように動悸や吐き気がでたことをマイナスととらえずに何かきちんとしたい気持ちが強まったサインとしてプラスに考えます。ちょっと他人へわからないことを聞かず独りで抱え込みがんばっているようであれば恐る恐る周りへ困った時は相談してみてはいかがでしょうか。
(舘野歩)

「良き娘婿とは?自分の心に素直になれたら」 '17.6 

Tさんは、胃腸炎をきっかけに3ヶ月間で10キロも痩せられたということは、たいへんな苦労があったのだと思います。日々の診療でも、ストレスが胃腸症状に出る患者さんによく出会います。Tさんは奥様と義理のお母様との関係の中で悩んでいらっしゃるようですね。なかなか難しい問題でありますが、奥様と義理のお母様の関係は長年培われてきたもので、そう簡単に変わらないかもしれません。共依存と表現されている状況は必然だったのかもしれません。Tさんは良き娘婿であろうと懸命にがんばってきたのだとお察しします。

良き娘婿とはいったいどのようなものでしょうか?Tさんは、家族と共に本当はどのように生きたいのでしょうか?おそらく、胃腸症状が強く出ているということは、自分の気持ちと、“かくあるべし”が大きく解離しているのではないかと思います。

一人で悩むことは時に思考の幅を狭めます。奥様に、“自分はこうありたい”という気持ちを一度率直に話してはどうでしょうか?奥様はTさんのことをどう思っているのかも気になります。奥様と話し合うことが難しければ、ご友人、カウンセリング、精神科や心療内科の受診といった方法もあります。

“自分はこうありたい”に近づこうとし過ぎて、車のお抱え運転手になり、かつ仕事をされて無理がたたり、その信号として胃痛、胃のもたれといった症状が出てきたのかもしれません。つまり、これらの症状が出たということは、ご自身への“無理しすぎ”のサインとも取れませんか?それだけ無理をされれば様々な体の症状が出るのはむしろ当然と言えます。ご自身の生活スタイル、妻や義母へ無理をしているところを少しでも“緩める”ことが大事な気がいたしますがいかがでしょうか?

すべてが丸く納まるということはないかもしれませんが、人生の主役はTさんです。もう一度、自分の素直な気持ちを掴み取ってください。今回のご投稿がその一歩になれば幸いです。
(鈴木優一)

「体調や病気に対する不安は、生きたい気持ちの証」 '17.5 

Bさんは、息苦しさに悩んでいるとのことでした。内科で検査をしても異常はなく、元々軽い喘息があるため窒息しそうな恐怖感からますます息苦しさが増し、仕事も辞めることになってしまったそうです。また、お子さんの病気(その後完治)やご主人のケガなどが原因で病気に対する恐怖心が強まったことがきっかけと振り返っておられます。

確かにお子さんの病気は心配ですし、重ねてご主人も手術となると心労は相当なものだったことでしょう。

体調不良は不愉快なものですし、ましてや理由がわからないとなると、体調不良の原因や改善策を探りたくなってしまうものでしょう。しかしそうなると、どんどん自分の身体の状態に注意が向き、些細な変化もチェックするようになってしまうので、身体もそれに呼応するように敏感に反応してしまいます。とはいえ、「気にしないように・・」「自然に・・」と考え方を工夫しようとしても、それもまた難しいものですね。つまり、身体の調子にしても考え方にしてもなかなか思い通りにはならないということです。逆にそんな中でも本を読んだり、絵を描いている時には苦しさを忘れている・・・といった経験をされているのは、重要なポイントになります。他の方も指摘しているように、注意が身体から離れて目の前のことに向いていると苦痛が生じないということですね。

病を恐れる気持ちはとても自然なことです。それは健康で、安全に生活したいという気持ちの証だからです。息苦しさの恐怖心はすぐには無くならないかもしれませんが、それがあっても何とかなる・・・という経験を積み重ねることによって、失っていた“自分自身への信頼”“自分の身体、健康さへの信頼”を少しずつ取り戻していくことが大切でしょう。息苦しさへの不安をあえて忘れようとする必要はありません。怖いものは怖いし、嫌なものは嫌なのです。ただ、その中で何とか「出来たこと」は流さずに、「やれたね!」と褒めてあげましょう。最近の書き込みでは、安定剤を飲むことで(飲めるという安心感も含め)動きやすくなっているようですね。今は、薬を補助輪として使いながら、ご自身が少しでも「いい一日だった」と思えるように過ごしてみましょう。その際には、あくまでも体調の安定ではなく、今日一日の過ごし方、同じ一日なら何をしようか・・と考えてみると良いですね。ウォーキングにしても、絵を描くにしても、呼吸を忘れるためにやるのではなく、実りある一日にするためにやるのです。森田は「治そうと思う間は、どうしても治らぬ。治すことを断念し、治すことを忘れたら治る」と言っています。つまり、気になることを取り去ろうとしている間はそこに注意が向いて、逆に意識してしまうということを示しているので。とはいえ、断念するのは難しいでしょうから、「治す」ことをちょっと先送りにしてみましょう(すぐに・・・ではなく)。そして、まずはBさんも書かれているように「色々織り交ぜて・・」少しでも良い一日になるように工夫してみたらどうでしょうか。いずれ、“かさぶた”がいつの間にか取れていることに気づくように、自由に動けている自分に気づくと思います。
(久保田幹子)

「やり続ける事で先が見えてくる」 '17.4 

Rさんの書きこみを読ませて頂き、力強さを感じました。レンタルビデオ店での出来事ですが、悔しい気持ちを持って戻ってきたり、車の中で記入したりなど、何とかして目的をはたそうとする逞しさがあります。回避することは簡単ですが、あえて簡単な道を選ばず乗り越えようとしています。

コメントの中にもありましたが、回避すれば回避するほど人間はさらに恐くなってしまうのです。震えようが、店員さんにどう思われようが、自分のやるべきこと、やりたいことをやりとげた今回のような体験を増やしていってください。同様に不安と共に行動できた体験を重ねていくと、不安を多少感じてもそれほど気にならずに行動できるようになっていくのです。

当院で森田療法の入院治療をした患者さんが退院の時にこのように話していました。「気分の善し悪しと実際出来たことの結果は関係していなかった。どんなに調子が悪くてもできたことも多かった」と。この言葉は、私たちに「必ずしも良い状況でなくても、やり続けることで先が見えてくる」という希望を与えてくれます。

最後に、「子供の習い事を一緒に体験しに行かないかとママ友から誘いがきている」と書かれていましたね。その時にパッと感じた「行きたい」という思いが大事なのです。失敗したり、恥をかいたとしても「やりたいこと」をやることこそ、人生に輝きを与えてくれます。Rさんの中に、よりよく生きたいという克己の姿勢が認められました。その気持ちを活かして「やりたいこと」を避けずに実現していってください。強さ、逞しさを持つRさんならできます。健闘を祈っています。
(石山菜奈子)

「書痙について」 '17.3 

Jさんは以前も時折手が震えることはあったものの、3年前の単身赴任以降、書痙の症状が急激にひどくなり、この1年半ほどは自室で一人書類に記入する際も緊張して手が震えてしまうとのことです。手の震えの原因は色々あるにしても、震えをより気にするようになった背景には自分がどうありたいかという思いや対人場面への身構えなども関係しているのかなと思います。3年前が大きな転機ということで、家族や慣れ親しんだ場所を離れたことに加え、転勤で職場の雰囲気や仕事の内容、役職が変わられたといったような変化もあったのでしょうか。手の震えを意識してしまい、同じことにならないようにと努めれば努めるほど手が震えてしまうというのは辛いですよね。

森田先生は退院患者さんを対象に開いていた「形外会」で何度か書痙についてお話されています。その中で何度か登場するのが山野井さんという方です。この方は書痙の背景に、対人恐怖もお持ちでした。森田先生のところに入院して40日間作業をとにかくやって、退院の頃にはあまりよくなった感覚がなかった。良くならなかったので会社を辞めたかったが、森田先生に会社に戻らねば治らないと言われてしまい、恐る恐る重役に面会に行くことになった。その際、重役の部屋に入るまでは不安でたまらなかったのに、一言二言話すうちにすらすらと話すことができ、初めて入院の効果に気付いたとのことです。その後書痙も改善していきました。森田先生は山野井さんの改善のメカニズムをこう分析しています。「退院時に思い描いていたようによくなっていなかったことで、ご本人には森田への恨みの気持ちがあっただろう。しかしこの恨みと同時に一方にはむしろもう治らぬものと覚悟し、捨て鉢になった時に初めてここに心機一転の時節が到来したのだ」。

Jさんの「絶対乗り越えます」には強い意志とガッツを感じます。その力を(もうそうされているかもしれませんが)手の震えを止めることそのものよりも、仕事や生活で必要なやることを進めていくことに向けていただけたらと思います。手が震えないようにと思ってしまう気持ちは我々の心の自然ですから、その気持ちはそのままに。でもできる範囲でやることをやる。森田先生は「(手が震えないようにと)はからう心はそのままに、ただペンの持ち方は自分の心持のよいように持ちかえるのでなく、必ず正しい持ち方をして、字は震えても不格好でも遅くとも読めるように、金釘流に書くということを忘れさえしなければよい」と述べられています。震えが気になる裏にある自分の気持ちや考えについて、カウンセラーの方とともに振り返り理解しながら、日常生活はこのように送っていただけると良いかと思います。また体験フォーラムでもその後の様子を教えてください。
(今村祐子)

「身体の症状と付き合いながら」 '17.2 

Kさんが頭のふらつきや頭重感、身体の揺れに困っています。心理的ストレス場面で強まるようです。家に閉じこもって横になっているとめまい感が強くなるようですが、病院で検査しても特に異常はないと言われたとのことです。薬を飲むにも(耐性が出来て効かなくなった際には症状に苦しむのではないか)との不安があり、薬をやめようとしたところ、身体のグラグラ感から横になってもいられず、生活自体が出来なくなってしまったとのことです。

眠っている間は頭重感は生じないのは、寝ている間は症状に意識を向けないからだと考えます。「症状を書くほど治るのが遅れる」というのは、書くことにより症状に視点を向けることで「精神交互作用」により症状を強く感じるようになるため、そういう治療姿勢にならないように述べられたものだと思います。

薬の内服を「はからい」と書かれていますが、主治医の先生と相談して内服しているのであれば、決して「はからい」ではありません。セニランによって頭重感は和らぐとのことですので、「また症状が出るのではないか」と常に気にする状態でいるのでなく、まずは薬を定時に飲むようにして、出来ることから行動してみることです。また、その取り組みのなかでもし症状が出た場合にも、(きちんと定時薬を飲んでいるので)すぐに頓用薬で対処しようとするのでなく、症状を感じつつも出来る範囲でやってみることをお勧めします。

「死んでも構わないという開き直りの心境になれない」とのことですが、誰もが森田先生のように思える訳ではありません。焦らずやって行きましょう。
(矢野勝治)

「とらわれにくくするために…」 '17.1 

Aさんは約2年前に回転性めまいをおこし、耳鼻科、カイロプラクティックで加療されましたが、思わしい改善はありませんでしたが、現在はリハビリを続けていらっしゃいます。めまいは気持ち悪くなったり、立っていられなくなったりなどの症状も伴いますし、本当に辛かったと思います。その中で良く頑張ってリハビリを続けていらっしゃいますね。その甲斐もあって、大きな発作は起きなくなっているとのことですね。めまいに対しては自律訓練法も有効な方法だと思いますが、Aさんは「とらわれやすい性格」とのことですので、森田療法的な考え方・方法も役に立つと思います。

めまいは不快ですので、「なんとかなくしたい」という気持ちは良く分かります。ただ、とらわれやすい人が、めまいそのものをどうにかしようとすると、「今、めまいはしていないかな」「今日、めまいはでないかな」「外出しても大丈夫かな」などと考えがちで、どうしてもめまいに注意がいってしまいますね。その結果、自分自身の身体に注意が向いて、自律神経が乱れてめまいをおこして、さらにめまいが気になって、と悪循環になりがちです。ですから、「めまいをなくす」ということに力を注ぐよりも、「日常生活を豊かにする」という所にエネルギーを注いでいくことをお勧めします。めまいのために、あるいはめまいへの恐怖のために本当はやりたかったのに、できなくなってしまった、もしくはやらなくなってしまったことはないでしょうか。どんな些細なことでも構いません。Aさんがやりたいこと、やってみたいこと、少しずつ手をつけていきましょう。今の生活を充実させていくことが、とらわれにくくするコツです。是非とも頑張って下さいね。
(谷井一夫)

PCサイトへ
TOPへ