症状別アドバイス集

不安神経症の部屋

「本当の自信とは何か」 '17.5 

Hさんはパニック障害と診断されてからずっと息苦しさと闘っており、電車には乗れるようになったものの、未だに常に緊張したような息苦しさが残っているとのことでした。特に今は、これから新しい職場で働くことから、この症状を持ったまま入社して良いのだろうかと不安に思っていらっしゃるようです。

薬についても、「薬があれば快調、減薬すれば元通りを繰り返している、情けない」と書かれていますが、それは「結局薬が無ければ生活できない」自分は情けない・・・という気持ちなのでしょうか。薬に対しては多くの方が同じような気持ちを抱きがちです。薬が効けばホッとするけれども、同時に「薬に頼らなければならない自分はダメな人間だ」と思ってしまうから葛藤してしまうのですよね。Nさんがアドバイスされているように、薬はあくまでも補助的なものです。自分の背が小さい時には、高いものを取る時に踏み台が必要ですが、成長すれば踏み台は不要になります。薬もそれと同じことです。Hさんの不安と付き合う姿勢が培われれば、当然薬も不要になるので、それまでは薬を味方につけるつもりで主治医ともよく相談してみて下さいね。

「とらわれている本当の理由を知りたい」「神経質であったり不安を抱えやすいタイプの性格はどのような捉え方や考え方を修正していけばいいのか」といったことにも悩んでいるようですが、最初の問いの答えが後者の問いになるのかもしれません。つまり、問題は症状や不安なのではなく、自分自身の考え方にあるということであり、実際Hさんはそのことに気づいてきているということですよね。

今の不安を、新しい職場に対する不安とは気づいているようですし、それ自体はとても自然な不安でしょう。しかし、失敗するわけにはいかない、職場に適応しなければ・・と身構えてしまうことが不安をより強めており、さらに「このままではいけない」と考えてますます心身の状態へのとらわれを強めているようです。つまり、考えてもわからない未来のことをあれこれ考えて、より一層自信を失わせているのです。

ではどうしたらいいでしょうか?まだ見ぬ職場のことを考えても答えは出るはずもありません。万全にしたいわけでもない・・・と書き込まれていますが、やはりどこかで「大丈夫な自分」をあらかじめ実感したい、先に自信や保障が欲しいという思いがあるように思います。

森田は、「強い人が勝ち、弱い人が負ける、上手な人が良く出来て、下手な人が上手く出来ない。それが事実であって、その事実をそのままに見るのが信念であり自信であります」と述べています。つまり、自信とは、勝ったり上手く出来る力をあらかじめ持っているということではなく、ありのままの事実を見る力ということでしょうか(長所、短所も含めて)。森田はその後で、(要約)“例えば高跳びで気おくれがした時、色々と自分の心の態度を決める、などのはからいごとに迷わずに、自分自身を見つめよと言います。そうすると、本当はもう少し上達したい、少しでも余計に跳びたいという欲望が見えてくる・・。そしてその欲望のままに手を出し、やめずに続けていさえすれば、ついには上達して自信も出てくるようになる”とも述べているのです。

Hさんが悩むのは、それだけ新しい職場への期待や適応したいという欲求があるからですね。その欲求が強いことを認めそのまま進むこと、そして何より、自分は神経質であったり不安を抱えやすいタイプなんだ・・と、ありのままの事実を認めること、それが今の自分を成長させ、本当の意味で神経質を生かすことに繋がるのではないでしょうか。
(久保田幹子)

「自分のための時間も作ることを忘れずに」 '17.4 

Tさんは、自営でシングルマザーです。両方とも責任が重い状況ですね。その中で癌を患われパニック障害を発症したとのこと、死の恐怖を感じ、自分が死んだら娘はどうなるのだろうと思うと強い不安を感じるのは自然です。

パニック障害になる方は、周囲に自分を合わせて無理してしまう方が多い印象です。最近は友達や家族に頼っているとのこと、とても良いと思います。周囲に自分を合わせようとしすぎずに、自分のできないことは誰かに頼むということは必要なことです。一人の人間で抱えられることは限られています。適度に頼りつつ仕事、家事などをやっていって下さい。「仕事をしていると娘に構ってあげられない」と嘆くお母さん方がいますが、実は働きながら家のこともやる母の姿ほど格好良いものはありません。直接娘さんと向き合わなくても、娘さんはお母さんの背中を見て成長していきます。癌やパニック障害を抱えながらも仕事、家事をされているTさんを見て、娘さんも誇らしく思っていらっしゃると思います。

薬に関しては、適切に使用すれば問題ありませんし、コメントにありましたように良い時期に減らしていけます。薬を服用していても充実した生活を送ることを重視して下さい。

最後に、仕事や家事で忙しいと思いますが、自分のための時間も忘れずに作るようにして下さい。患者さんの中では週に1回はカフェで過ごすようにしている、映画館に一人で行って自分の時間を持つようにしているという方々がいます。周囲に合わせすぎる人の場合、自分自身のために使う時間を忘れがちであるため、一呼吸置く時間を作りましょう。
(石山菜奈子)

「ありのままの赤ちゃん」 '17.3 

kさんは出産後にストレスが原因でパニックを起こし、普通だと思っていたご両親がそうではなかったことに気付き、苦しい気持ちをどうしたらいいかわからないと書かれていました。産後の肉体的にも心理的にも助けがほしい時、分かり合って暖かい気持ちでいたい時に衝撃でしたね。Aさんも同じような状況を経験されたということでお二人のやり取りに温かみを感じました。

kさんは苦しさと同時に、これまでの価値判断を親にゆだねて生きてきてしまった自分への憤りもあることや、赤ちゃんに自分と同じような思いをさせたくないという思いについても語られています。自分の色々な思いを感じ、冷静に見ようとする力、起きていることを整理して理解し、対応できる力をつけようとする姿勢からとても愛情深く、知的な方なのだろうなという印象を受けました。自分の事を冷静に見て自分について悩む姿勢(自己内省)があり、子どもにとってよりよい母親になるようにと願い努力されるところ(森田では生の欲望と呼びますね)もお持ちな様子からは、神経質(神経質というのはとても良いものです)でいらっしゃるのかなとも思います。このサイトで色々なケースを見て学びながら、カウンセリングにも通われているとのこと。小さい赤ちゃんがいる中でカウンセリングに通うのは大変なこともあるかもしれませんが、Kさんの場合はとてもよい支えになっていっているようですね。

目の前の赤ちゃんを見て「ああ、この子はこの子なりの理由であるがままにふるまっているな」というような感覚になる瞬間が最近増えてきているとのこと。すごい感性だなと思います。たくさん泣いて自分の気持ちを話し、自分の気持ちに触れていく中で、少しずつ自分の気持ちがわかっていき、その瞬間瞬間を感じられるようになるのですよね。とても大切な自分の土台です。

不安に圧倒されたり、色々くよくよすることもあるかもしれませんが、それは神経質の特性でもあります。細かで色々と感じ考えるところを赤ちゃんへの対応に生かしていけばより赤ちゃんに細やかに反応することができますし、お互いにその瞬間瞬間をとても大切に生きていくことに繋がっていくはずです。そうやって赤ちゃんに接し育てていく中で、ご両親との関係とは違う新たな関係をKさん自身が育まれていくことになるのではないかと思います。
(今村祐子)

「別れは辛いもの」 '17.2 

Iさんはお母様が突然亡くなられて悲しい思いに暮れています。

別れとは寂しく悲しいものです。病気などで余命がわかっていても受け入れ難いものですが、胸部大動脈解離で突然亡くなられて心の整理がつかない状況ではなおさらのことだと思います。忘れようとすればするほど辛さは募るものです。

一方で(お母様だとこういう時にどうアドバイスしてくれるだろうか)と考えることはありませんか。あえてそう考えずとも自然とお母様だったらこう言うだろうと浮かんだりしているかもしれません。お母様との思い出、お母様の考え方は、周りの関わった多くの方の心に宿っているのではないでしょうか。お母様から学んだ教えはIさんの礎になっていることと思いますし、さらにはあなたを通して次の代へ引き継がれるとも言え、亡くなられても(関わった人達の心の中で生き続ける)ということが出来るかもしれません。

とは言え、別れは辛いもの。Aさんも述べられていますが、大事に思われていた方の死別の辛さは無理に忘れようとしなくてよいのだと思います。
(矢野勝治)

「他人がどう感じているのかは本当のところは分からない」 '17.1 

Aさんは約15年前からパニック障害を発症され、発作そのものはほとんど起きなくなっていますが、乗り物に乗る時や歯医者に行くときなどの予期不安が辛いとのことです。パニック発作のときの恐怖感は本当に強いものですから、本当に辛かったと思います。また、症状が長期間になればなるほど、予期不安も強くなりますから、「普通の人なら大変な思いをしなくていいんだな」とうらやましく感じるのも無理はないと思います。

そして、症状は他人と比較することはできないものですし、「自分が特別に苦しい」と感じてしまうことも自然なことです。しかし、本当にそうでしょうか。確かにAさんはパニック障害で苦しんでいらっしゃいますが、乗り物に乗っている人や歯医者に行っている人は何も悩みや苦しみがないのでしょうか。もしかしたら、Aさんと同じようにパニック障害を抱えていらっしゃる方もいるかもしれませんし、他の病気や対人関係などで悩んでいるかもしれません。もっと言ってしまえば、とくに病気や悩みがなくても、乗り物に乗るのがあまり好きでない人や歯医者そのものがすごく苦手な人もいることでしょう。

苦手なことが全くない人、悩みが全くない人はいませんよね。人には好き嫌い、得意・不得意があって、それは人それぞれ違うものですね。そして、私たちは色々な場面で様々な感情になりますが、感情そのものはどうにかなるものではなく、その時その時でどんな感情であっても、味わうしかないですよね。ですから、苦手なものは苦手でよいし、怖いものは怖くてよいのではないでしょうか。

Aさんの得意なこと、好きなことはなんでしょう?もしかしたら、「ない」とおっしゃるかもしれませんが、そんなことはないはずです。他の人から見たら「Aさん、うらやましいな」と思われていることがあるはずです。そのことを広げていくことがAさんらしく生きていく、ということに繋がり、予期不安にとらわれることも減ってくると思います。ちょっと厳しいことも書いてしまったかもしれませんが、是非とも、Aさんの強みを磨いていって下さいね。
(谷井一夫)

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