会員制掲示板の東京慈恵大の専門医アドバイスの履歴集

症状別アドバイス集

その他の部屋

「日記について」 '18.6 

Kさん、初めまして。森田療法の本を読まれてから日記を書かれるようになったのですね。本にも触れられている通り、日記療法は入院森田療法の中で、患者さんが一日の作業体験を振り返るために記載することから始まりました。不安にとらわれがちな患者さんに、森田先生を始め多くの森田療法家は敢えて症状以外に目を向けることを目的として、自身の取り組みを記載することを奨励し、愚痴などを禁止したのです。

しかし、これはあくまで入院森田療法の中の原則論にしかすぎません。ましてや、日常生活で奮闘されているKさんにとって、愚痴が書けない日記は窮屈な存在でしかないと思います。森田療法は全ての感情を自然な物と見なすことから始まります。私はKさんに愚痴も含めご自身の率直な感情を是非日記に記載していただければと思っています。

ただし、日記を書く上で、患者さんに一つだけお願いしていることがあります。それは、最後の一文を自己否定で終わらせず、自分なりに奮闘し頑張った点を記載してもらうことです。というのも、神経症やうつ病を患われている患者さんは、減点法の天才で自分の出来ない所ばかりに目が向いてしまうからです。仮に悲しみや不安でいっぱいで遭ったとしても、何か一つ行動したことを、取り組んだ事実として記載し、認めて上げることです。

ある患者さんは、毎日寝込んでいるだけで何もしていないと、当初嘆いていましたが、やがて自宅で飼っている猫に餌をやっている様子を日記に記載するようになりました。次第に、猫の餌の食べ方から健康状態を把握するまでになったのです。このことは、決して小さなことではなく、症状に苦しんでいる患者さんにとって、日記を媒介としながら周囲に視点を転換し日常生活に行動の手を広げていったことを意味します。つまり、これこそ回復のための大きな一歩なのです。そして、回復のための一助に日記を大いに活用いただければと思います。

Kさんの自由な日記から新たな発見が生まれることを期待しています。お大事にされてください。
(樋之口潤一郎)

「どうしたらいいかわからないとき」 '18.5 

Qさんは「2年前に会社からリストラされ、それ以降、不眠と動悸がするようになりました。 再就職すれば収まると思いましたが改善されず、ずっと症状が続いております。 今年2月に人間関係のトラブルで退職しました。 」「 病院からは今は仕事をしないほうがいいと言われましたが、収入がない事や家で何をしたらよいのか分からないです。」と書き込まれています。

仕事をリストラされるということは、大変な傷つき体験になりますし、収入がないということは、生活の基盤を揺るがすこと。不安や不調は無理もない反応といえるかもしれません。安心して安定した生活を望むことは人の基本的な願いといえるでしょう。また、職場の人間関係も大きなストレスとなること。厚労省の調査でも、自分の仕事や職業生活に関して強い不安、ストレスが「ある」と答えた人が60.9%に上り、その中でもトップを占めるのが職場の人間関係です。ストレッサ―の認知やストレス反応の出方を左右する重要な要因とされています。それらのことから「仕事をしたらまた同じことが起こるのでは?」と不安に思ってしまっているところもあるかもしれませんね。

現実的な生活上の不安については、身近な人、病院のケースワーカーさん、地域の相談機関に相談してみてもよいのではないでしょうか。すぐに解決策が見えなくても、一緒に考えてくれる人がいるのはそれだけでも心強いものです。

病院からは今は仕事をしないほうがいいと言われているとのことであり、書き込みだけからは、どの位の動きを探っていくのがいいかはわかりません。ただ、「焦りから追い立てる」動きは悪循環にもなりかねません。ここは、「焦る心は抱えつつ、実現可能なことから一歩ずつ」、を目指しましょう。例えば仕事をするとしても、できそうなもの、対人接触が少ないもの、単発や短期間、撤退可能なアルバイトやパートにしておく、など。

そして、「どうしたらいいかわからない」ときに大切にしたいのが、「生活の動き」です。日々、なんとか身を起こし、顔を洗い着替えをし、身支度をする、外に出られなくても窓を開けて空気の入れ替えをする、たくさん食べられなくても少しずつでも箸だけはつける、などです。

そこから少しずつ身の周りのことをしたり、散歩などに出てみるのもいいですね。そうした生活の動きを味方につけていくと、気持ちがあとから動き出すことがあります。
(塩路理恵子)

「不安状態の方は薬に頼りたいが頼りたくない相反する気持ちを持ちます」 '18.4 

Yさん、うつ病になりしかも再発を繰り返しており、藁をもつかむ思いでメンタルヘルス岡本財団のHPへ書き込まれたのですね。

再発を繰り返すうつ病の方の薬物療法についての一般論を申し上げますね。再発するのは様々な要因がありますが、薬物療法の種類としては、抗うつ剤ではなく、気分安定薬を称される一群の服薬をお勧めします。お飲みになったことがあり効果がなければごめんなさい。気分安定薬とは、抗うつ薬でなく、抗精神病薬、抗てんかん薬、炭酸リチウムといったものになります。こう聞くとますます服薬をしたくなくなるかもしれません。薬には効果と副作用があります。この辺りを先生とよく話し合うことが重要です。以上の薬物療法は再発に焦点を当てた案です。

しかし一般論として、神経症の方々は不安を除去する手立てを望む反面、薬の副作用や依存性に対する不安を人一倍持ちやすいというアンビバレントな心理を有しています。要するに不安除去の手段が新たな不安の種になるわけです。それだけに「薬には頼りたいが頼る」のも不安なのです。特に頼りたい心性が優位に認められるのはパニック症(パニック障害)の患者でしょう。投薬と治療終結は患者が頼りにしていた存在をなくす不安を喚起します。しばしばその不安が自律神経の身体反応をもたらし、患者さんはそれを症状再燃の兆しと受け止めることによって予定してた終結が延期されてしまうわけです。逆に「頼ることから自律的なコントロール喪失をすることへの不安」が優位に認められるのは強迫的に物事を遂行する方に多いと思います。パニック症(パニック障害)に比べて強迫的に物事を行う人は「薬に頼らず自力で治したい」と主徴することもあります。そんなとき私は医学的判断も入れてですが、ある程度無投薬で治療出来そうと判断したときは無投薬で治療を開始したります。

Yさんのもう一つの可能性としてはうつの回復期に一見神経症のように不安が前景にたってくる場合もあります。ある程度活動意欲はあるのであれば、様々な感情を抱えつつ建設的な行動をする森田療法の考えがあう可能性があります。

ただご自身が書き込まれていますように、薬物療法にも限界があります。薬物療法の限界を踏まえても森田療法の考え方は生かせます。それがむしろ森田療法の強みかもしれません。薬物療法で取り切れない不安やうつの感情の背後にはYさんの「~したい」切なる思いが隠れているのではないでしょうか?不安やうつの感情を抱えつつ、いかに「~したい」方向の行動へ踏み出すかが大事になってくるでしょう。「薬は正直飲みたくない」といった言葉にYさんの「克己の姿勢」の強さが表れていると思います。その意欲を服薬するか否かでなくもっと建設的な方向へ生かしていければよいのかなと思います。つまり薬物療法は生活を立て直すための補助的手段であると思って頂ければ良いと思います。
(舘野歩)

「自分にとって仕事とはないか、問い直すとき」 '18.3 

Sさんは思春期の対人関係で辛い体験をされたことを契機に対人恐怖を抱え、社会人になった後も、仕事のストレスから鬱となり休職を余儀なくされたことは非常に辛い体験であったとお察し致します。また、2006年には舌癌という命に関わる病を患いながらもその治療を乗り越え、今まで転職を繰り返しながらも仕事を続けてこられたことに敬意を表します。そして今、仕事を続けていくことに非常に大きな苦痛を感じているという状態であることを承知しました。

Sさんにとって仕事とはどのような存在でしょうか?仕事の存在意義は人それぞれ様々です。生活していくお金を稼ぐため、自己実現のため、社会貢献のため、人に認められるため、などさまざまあると思います。仕事での行き詰まりは、Sさんの生き方を見直すチャンスかもしれません。

森田療法は、“かくあるべし”や“ねばならない”という固定観念を打破し、自分の持っている素の欲求を発見・発揮し、あるがままの自分を目指します。Sさんは今まで自分の気持ちを抑え、耐え忍ぶ生き方をされてきたのではないでしょうか?子供の頃に持っていたような、“~したい”という純粋な気持ちを感じる時はありますでしょうか?もしそれがまったくわからない状況であれば、日常のありふれた事でもよいので、仕事以外のことに目を向けることをお勧めします。たとえば、電車通勤であれば、一駅前で降り、歩きながら目に入ってくる風景を観察してみる、昔好きだったことに手を出してみる、のんびりと好きな音楽を聴きながら1日を過ごしてみる、などいかがでしょうか?そして、自分の感覚や感情を意識してみてください。心地よいとか、落ち着くといった身持ちが得られれば、そのことにもう少し手を出してみましょう。

Sさんが何度も転職しながらも仕事を続けられてきたことを考えると、粘り強さは人一倍持っていらっしゃるのだと思います。そのエネルギーをどう生かすか、これが課題ではないでしょうか?現代社会は生産性向上や成果主義を謳われるようになり、メンタルヘルスが追いついていない職場が多いのが現状です。そのような中で、生き抜くためには自分の支えとなる柱を仕事一本に絞らないことも大切と思います。“仕事が生きがい”といった生き方は、仕事が順調に行っているときはよいのですが、仕事が行き詰まるとぽっきり折れてしまうものです。自分を支える柱が増えることを願っています。

今こそ立ち止まって自分の本当の気持ちを確認する時かもしれません。
(鈴木優一)

「迷い・自信喪失した時こそ、自分がどんな生活を送りたいのかを考えてみる」 '18.2 

Sさんはオーバーワーク(かなりの残業)の末にうつ病になり、異動したものの昇進も重なって新しい環境になじめず休職、その後復職したものの、何もまともに出来ないという気持ちで自信が持てず、何をするにも不安で、疲労感が強いとのことでした。怠けていると思われているのではと周囲の目も気になり、辞めることも考えたものの踏み出せずに悩んでいると書かれていました。オーバーワークをし、体調不良で異動しつつも昇進・・・ということですから、Sさんは仕事に真面目に取り組み、また成果を出す能力もある方なのだろうと思います。おそらく頑張りすぎてうつ病になってしまったのでしょう。

休職して、復職する際には、真面目な方ほど「今度こそダウンしないようにしなければ」と考えてしまうので、Sさんの場合も相当のプレッシャーがあったと思いますし、新しい職場に馴染むにはエネルギーが必要だったろうと思います。

ではSさんがダウンするほどまで頑張ったのは、何のためだったのでしょうか?周囲の期待に応えたいという気持ちもあったかもしれませんし、ご自身の完全欲(きちんとこなしたい)もあったかもしれません。また理想や、自分への要求が高いということもあるかもしれません。そういう方がつまづくと、逆に自分は何も出来ないダメ人間・・・と一気にマイナス評価にしてしまいがちです(0か100かの両極端)。Sさんが書かれている今の不安や失敗への恐怖というものも、こうした完全欲から生じているものと思われます。思い切って仕事を辞めることを考えたのも、極端な捉え方の現れでしょう。

ではどうしたらよいのでしょうか。迷ったときこそ、原点に立ち返ることが重要なのだろうと思います。ここまで頑張ってきたのはSさんが自分なりに納得する仕事をしたかったからでしょう。しかしながら、いつの間にか周囲の評価や期待というものに翻弄され、自分のペースや自分自身を見失ってバランスを崩してしまったのだろうと思います。つまり自分自身の本当の気持ちや体感(疲労感など)が二の次になってしまったということでしょう。

奇しくも一呼吸を入れることになった今、もう一度自分は何を望んでいるのか、どんな人生を求めているのか・・・を考えてみても良いかもしれません。大きな目標を掲げるのではなく、のんびり過ごしたいとか、映画を見たいとか、近所を散歩してみたいとか・・・小さなことで良いのです。自分の心に問いかけてみて、そうした自分の「~したい」という気持ちを実行することに重きを置いたらどうでしょうか。誰かのための人生ではなく、自分のための人生です。自分をまず大事にすることで、今の焦りや周囲への恐怖ももう少しやり過ごすことが出来るようになると思います。
(久保田幹子)

「治療を行えば回復への道筋が見えてきます」 '18.1 

Gさんは2週間前から死ぬことについて考えてしまうとのこと、辛い状況ですね。死にたい気持ち、食欲不振、睡眠障害を合わせますと抑うつ状態である可能性が高いです。精神科のある病院・クリニックに行くことをお勧めします。森田療法はうつにも適応となりますが、ある程度回復してからとなります。まずは専門医を受診し、休養・薬物療法など医師の指示に従い治療を受けてください。

ある程度回復したら森田療法を生活に生かしていけます。あるテレビを見たことがきっかけとのことですが、原因は一つとは限りません。〜すべきにとらわれていなかったか、仕事で無理をしていなかったか、周囲の人にヘルプを出せていたか、親しい友人で相談できる人はいたか、仕事以外の楽しみもあったかなどを振り返りながら、回復に向けて、また再発予防に取り組んでいきます。高校時代にも同じような状態になったとのことですから、どのような時に調子を崩しやすいかを知っておくことも再発予防につながります。

今回、「告白することで少しでも楽になるのでは」という思いで勇気を振り絞ってメッセージを送って頂きました。本当に良かったと思います。実際、抑うつ状態になると人に助けを求めるという力も失くしてしまい、一人で悶々と悩まれている方も多いのです。他の人に助けを求めれば、自分の考えうること以外の方法が導き出されることがあります。一人で悩まず専門家をはじめ親しい人に相談してみましょう。
(大久保菜奈子)

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