メンタルニュース

メンタルニュース NO.22

心の健康
森田正馬の精神療法「森田療法」

人間関係がうまくいかない。つまらないことで、すぐクヨクヨする。ささいな身体の不調におびえる。ストレスがたまる……。こんな悩みを抱えていませんか?
だれ にも言えず、ひとりで苦悩していないでしょうか?
そんな人のために本誌今号では、神経症にたいする代表的な精神療法「森田療法」を紹介しました。
この森田療法は、神経症の療法というだけにとどまらず、“人間的な悩みをいかに受けとめ、どう克服していくか”について、示唆を与えてくれることと思います。

森田療法は生き方の「再教育」

森田療法というのは、神経症(神経質症〉の悩みを解決するための、すぐれた精神療法です。
これは、慈恵医大名誉教授の森田正馬博士が、一九二〇年ごろから始められた精神療法で、こんにちでは世界で注目されている神経症理論となっています。
人間が本来もっている、人間らしい欲望や不安、感情のメカニズムなどを科学的に解明―その理論にもとづき、「あるがまま」の心を育てることによって神経症をのりこえていくのが、森田療法の主眼です。したがって、生き方の「再教育」とも呼ぶべきものでしょう。

東京慈恵会医科大学・名誉教授
森田正馬博士(1874〜1938年)

読売新聞2004年(平成16年)4月18日号・5月9日号より転載

森田療法

東京慈恵会医科大学
精神科助教授
中村 敬

「目の前の事」一つずつ完ペき主義は不要「まず動く」が大切

新年度が始まって一か月余り。新しい学校や職場で、強い緊張・不安を感じたり、自信をなくしたり、やる気を失ったり……。そんな人たちのために、日本で生まれた精神療法「森田療法」の考え方は参考になる。東京慈恵医大第三病院の精神神経科診療部長、中村敬さんに、森田療法による新生活適応のコツを聞いた。
(山口 博弥)

●森田療法とは
慈恵医大の精神科教授だった高知県出身の森田正馬博士(一八七四〜一九三八)が、一九二〇年代に創始した。
特別な鍛錬を行うのではなく、日常生活で発揮される人間の生きる力を治療に結びつけるのが特色だ。
対人恐怖症、パニック障害、戸締まりの確認や手洗いなどを繰り返す強迫性障害といった様々な「神経症」(不安障害)の領域を対象としており、心理相談機関のほか、治療に取り入れている精神科医も多い。医師が行う場合は保険がきく。
神経症以外に、長引いたうつ病や、ストレスが身体症状に現れる「心身症」の治療に使われることもある。中国にも学会があり、米国では、がん患者の心のケアにも導入されている。

●不安は「あるがまま」に
不安や恐怖は、人間にとってあってはならない感情ではなく、自然な感情だ。その不安や恐怖の底には、「より良く生きたい、自分を向上させたい」という向上発展の欲求がある。森田博士は、これを∧生の欲望∨と呼んだ。
人間には、こうした両面があることを認めたうえで、不安や恐怖は、∧あるがまま∨にしておいて、目の前のやるべきことに全力を尽くす。怖がりながらも行動していく中で、いつの間にか不安や恐怖が消えている――これが森田療法の考え方だ。

●日常生活への応用
神経症というほどでなくても、もっと日常的な悩みにも応用できる。中村さんに、いくつかの事例への対処法を紹介してもらった=別項参照。
共通するのは、「百でなければゼロと同じ」といった完全主義で考えるのをやめ、「七、八割うまくいったらいい」と頭を切り替えることだ。
それでも、どうしてもうまくいかず、エネルギーが出ない時はどうすればいいのか。

「土日の前後に一日代休をもらい、三日間、完全に休んでみましょう。食事とトイレ以外は、音楽も聴かず、テレビも見ずに、ひたすら寝る。そのうち、『何かしたい』という気持ちがわいてくるはず」と中村さん。
そうなったら、少しずつできることを再開する。できることが増えるにつれ、元の自分を取り戻せるようになる。

●うつ病には注意
こうした方法を試しても、気分がふさいで何もやる気がしない場合は、「うつ病の恐れもあるので、迷わずに精神科医に相談しよう」と中村さんは強調する。うつ病による気分の落ち込みなら、休養と薬物療法でたいてい改善する。
神経症に悩む人や家族、立ち直った人たちが、森田療法の考え方を学び、体験を語り合う「生活の発見会」も全国各地で活動している。一人で悩み続けるより、一度問い合わせ、会合に顔を出してみてはどうだろう。

〔新しい環境で困っている人へのアドバイス〕
(中村さんによる)

◇人前で報告したり発表したりすることが恥ずかしい人は
緊張したかどうか、顔が赤くなったかどうかで、話が成功か失敗かを判断しがち。
緊張せずに上手に話せるように努力するのではなく、良い内容を聞き手に分かりやすく伝えることに力を注ぐ。森田博士はこれを「『気分本位』ではなく、『目的本位』」と言った。最初は緊張が強くても、次第に弱くなるものだ。

◇失敗やミスが怖くて行動できない人は
幼いころ、どうやって自転車に乗れるようになったか、思い出してみよう。何度も転びながら体で覚えていったはず。新しい生活の中で小さな失敗はだれにでもあり、むしろ必要でもある。うまくいかなかったら工夫すればいい。失敗から学ぶことが大切だ。

◇先輩や同僚、級友とのコミュニケーションが苦手な人は
相手からどう思われるかにばかり気を取られ、認めてもらっているという安心感がないと話せない。深くかかわって傷つくのが怖い、という心理もある。いろいろな面で受け身にならずに、自分から相手に働きかけてみる。まずは、自分からあいさつすることから始めてみよう。

◇やる気が無くなってしまった人は
学生であれば、集中力が無くても机に座り、授業を聞くこと。社会人であれば、「つまらないな」と思いながらも、目の前の仕事を一つずつこなす。森田博士が「外相整えば、内相おのずから熟す」と言ったように、形だけでも整えれば、そのうち少しずつ勉強や仕事に興味がわいてくることがしばしばある。

(読売新聞5月9日号より)

◆関係団体・情報サイト

  • 生活の発見会(本部・東京)
    TEL.03-3947-1011、FAX.03-3947-1018
    www.hakkenkai.gr.jp/
    1970年に発足、会員約4000人。全国約150か所で活動している。
    各地の会合日程や相談は本部へ。
    毎月第3日曜午後に京都、第4土曜夕方と第4日曜午後に大阪で初心者向け懇談会がある
  • 森田療法研究所(東京)
    TEL.03-3460-0601
    www.neomorita.com/
    神経質度の自己チェック表も掲載
  • 生きがい療法実践会(岡山県倉敷市)
    TEL.086-525-1231
    www.harenet.ne.jp/ikigai/
    森田療法やユーモアを取り入れ、がんと闘病

◆森田療法に積極的な医療機関(一部)

  • 三聖病院(京都市東山区) 075-541-3118
  • にしむら医院(長岡京市) 075-959-3066
  • 宇治黄檗病院(宇治市) 0774-32-8111
  • 高橋医院(京田辺市) 0774-62-1216
  • 奥野クリニック(富田林市) 0721-33-0058
  • 吉村病院(松原市) 0723-36-3101
  • 大西神経内科(西宮市) 0798-22-1668
  • 川崎医大川崎病院(岡山市) 086-225-2111
  • すばるクリニック(倉敷市) 086-525-8699
  • 森岡神経内科(広島市安佐北区) 082-819-0006
  • 磯島クリニック(高松市) 087-862-5177
  • 石渡神経科(松山市) 089-948-3385
  • 南国病院(南国市) 088-864-3137

なかむらけい
中村敬先生のプロフィール

医学博士。東京慈恵会医科大学精神科助教授、
東京慈恵会医科大学・附属第三病院精神神経科部長。
日本森田療法学会常任理事。当財団選考委員会・委員

〈略歴〉
1955年東京生まれ。東京慈恵会医科大学、同大学院卒業。
ブリティッシュ・コロンビア大学カウンセリング心理学学科客員助教授を経て、1995年から現職。

〈専門領域〉
森田療法、うつ病の治療。

〈主な著書〉
『うつはがんばらないで治す』(マガジンハウス)
『気楽に行こう、精神科!』共著(マガジンハウス)「森田療法」分担
「臨床精神医学講座第15巻」(中山書店)「うつ病者のグループの特徴」分担
『集団精神療法ハンドブック』(金剛出版)「対人恐怖症の心理面接」分担
『精神療法マニュアル』(朝倉書店)「心気神経症」分担
『こころの健康百科』(弘文堂)

―財団編集部― 産経新聞2004年(平成16年) 2月25日号より転載

最前線インタビュー

各種の悩みに心のビタミン
公益財団法人メンタルヘルス岡本記念財団
理事長 岡本 常男

心の健康時代のなかで、財団法人メンタルヘルス岡本記念財団(大阪市中央区)が、関心を集めている。神経症に対する関連機関への助成やセミナー、相談活動などを展開。幅広いネットワークで、各種悩みに心のビタミンを与える。

財団の設立はいつごろからか
かつて、流通小売業ニチイの副社長(兼営業本部長)時代に激務やストレスなどで、原因不明の病気で苦しみましたが、ある精神療法で克服。この貴重な経験がきっかけとなり一九八八年に、心の病で悩む人たちの役に立ちたい気持ちで財団を設けました。

具体的に学んだ精神療法とは
大正時代に生まれた森田療法です。知人から教わり関連の書物を何度も読み返して、一種の神経症がすっかりよくなりました。東洋の文化、歴史にぴったりの療法で受け入れやすく、財団でも心の持ち方が基本という教えを大切にしています。

主な事業は
神経症に対する精神療法の研究・啓発活動への助成金交付、医療機関や参考書の紹介、心の健康に関する講演会・セミナーの開催などです。

助成活動の実情は
応募申請をもとに選考委員会で審査。これまでの交付件数は約八百五十件。研究者や医科大学、病院関係、研究機関などです。

相談に対しては
八年前から、インターネットのホームページを開設。注目のアクセス数は月間約五十万ヒットにも及んでいます。一定日に電話無料相談も受け付けており、関心がとても高い。

最近の相談内容の特徴は
厳しいビジネス社会を反映して、男女を問わずリストラや人間関係、対人恐怖、家庭問題、抑うつ神経症などの悩みが多い。また、十代を中心に若年の相談も増えています。神経症は、時代の流れに極めて敏感なようです。

神経症で悩む人へのアドバイスを
病院で異常がないと分かれば、何よりも気持ちの持ち方が大切。趣味や生き甲斐を求めて、日常生活を前向きに過ごすこと。明るく希望をもって生きてほしいですね。

ソフト面での実情は
早くから神経症に関係する図書室を設けており、無料開放で多くの蔵書やビデオがあり、とても好評です。また、大阪で一般向けの無料心の健康セミナーを定期的に開催中。小人数規模で、専門家らが分かりやすく講演します。
今月二十八日には、福島区民センター(大阪市福島区)で開きます。

今後の課題は
助成事業の充実とインターネット相談や、図書室などの活用促進、セミナー活動の徹底強化などで、より健康事業に財団として貢献していきたい。

問い合わせは 06-6809-1211(聞き手 速水 洋一)

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