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症状別アドバイス集

普通神経症の部屋

「精神的緊張について」 '18.6 

Hさん、初めまして。頻回なゲップに悩まされているようですね。ゲップは自分の意思とは関係なく一方的にやって来ますから、さぞかし辛かったと思います。ましてや下痢や嘔吐、最終的には突発的な不安や脳の痺れなどに襲われたとしたら、その苦痛は相当なものでしょう。ただ、適切な形で医療機関に繋がり、全般性不安障害という診断のもと向精神薬が処方され軽快に至ったことは幸いだったと思います。

この一連の流れから、私は様々な自律神経症状や不安の背景には、慢性的な緊張があるのではないかと考えました。文面にこそ表れていませんが、Hさんは日頃様々なことに奮闘し、かなり頑張られているのではないでしょうか。その分だけ、気を張り詰め、緊張を作り出しているように感じました。我々は一般的に不安になるから緊張すると思いがちですが、緊張が不安を引き起こすという点にも注目する必要があります。そうであるとすれば、緊張を和らげるための生活上の手立てを模索することが、回復の道標になります。

まず、睡眠は十分とれていますか。脳の休息は緊張緩和の要です。つい我々は夜更かしをしがちですが、それは睡眠負債をため込み、緊張の抜けない体を作っていることに他なりません。また運動を通した体作りも忘れはいけません。何も激しい運動を奨励するつもりはありませんが、便利な文明社会に頼り切っている我々は、筋肉を鈍らせることが当たり前になってしまいました。やせ細りしなやかさを失った筋肉は、外的な変化やストレスに対し容易に緊張を募らせるようになってしまったのです。それ故、ちょっとしたストレッチ、ウォーキングなどを通した体力増進は、緊張を持ち堪える上での安定剤的役割を果たすだけでなく、自律神経バランスの改善にも一石を投じています。

勿論、このような取り組みがすぐに効果を発揮する訳ではありませんが、健全な肉体に健全な精神が宿るという言葉のように、体の健康を見直すことが心の健康回復の最大の近道と考えて頂ければと思います。まだまだ大変な最中とは思いますが、より良い回復を願っております。
(樋之口潤一郎)

「普通神経質と森田療法」 '18.5 

Tさんは「私は今39歳ですが18歳ぐらいから、 起きている間は常時、浮遊性めまいに悩まされています。 心療内科にもかかりましたが、私にはなかなか薬が効かないようです。」と書き込まれています。 20年あまり、浮動性のめまいを抱えながら生活されてきているのですね。

めまいは、通常の「身を起こして活動する」ことを揺るがす症状なので、森田は、種々の身体の不調や、不快な感覚にとらわれているものを普通神経質と呼びました。症状としては頭痛、めまい、頭内のもうろう感、身体の倦怠感、耳鳴り、胃腸症状、不眠などが挙げられています。現代のICD分類では身体表現性障害(最近のDSM5では身体症状症と呼びます)の一部、全般性不安障害の一部に重なるとされています。森田先生は普通神経質を神経質の典型と考えました。そして身体的な不調や違和感、不快な感覚に対し、不安な注意を向けることでますます感覚も鋭敏となり、不調が強くなるというように、注意と感覚に悪循環が起こることが言われています。身体症状ではとくにこの「感覚の鋭化」は、症状を強め固定するものになります。 さらに神経質の人では、「仕事、勉強を円滑に進めるためには体調を整えておかなくては」といった「かくあるべし」が強く、前記のような悪循環をひき起こしやすい、とも言われています。

Tさんも20年余り症状に悩み、薬もあまり効かないということで、森田療法にたどりつかれたとのこと。フォーラムの皆さんの体験やアドバイスを参考にしながら、少しずつ行動、生活を広げてみてください。

なお、めまいの症状を持つ方は、「体調が悪くならないように」と生活を狭めてしまったり、横になりがちになることでかえって生活が不規則になり、自律神経のバランスが乱れてしまうことがままあります。まずは生活リズムを整えることから取り組んでみるのもよいと思います。
(塩路理恵子)

「心気症に対する森田療法」 '18.4 

Oさん、病気の心配で辛そうですね。血便のことから今度は卵巣の心配へ対象が移っていますね。

病気の心配をする神経症の中には「心気障害」というものがあります。まさに「心に気に病む」という言葉がぴったりで、専門的にはICD10という国際分類を紐解くと「(1)繰り返される検査により説明困難であるにも関わらず重大な体の病気が存在するという頑固なとらわれ」、「(2)何人かの医師からの保証を受け入れない」ことが定義とされています。Oさんは(2)については微妙でしょうか。血便についてはある程度医師の説明をご納得されているようですが、卵巣については不安が募っているので(2)を満たすことになるかもしれませんね。

まず心気障害に対する一般的なアドヴァイスを致しますね。まず病気ではないかと心配で色々な身体の病院へかからないことです。その都度身体科の医師であれば一通りの検査を致します。それを多くの施設で行うことに意味はありません。世の中には色々な医師がいて不安な面もあるかもしれません。しかしご自身が通われている医師がきちんと誠意をもって診療してくれているのであれば、その先生のアドヴァイスを受け入れ、診察ペースは医師の指示通りにした方が良いと思います。また心気障害の患者さんは得てして自分の感情を言葉にすることができない場合が多いです。体の心配が大きくなった時、「自分はどう思ったかな?」とか、「どう感じたかな?」を自らに問い直してみて下さい。

この上で心気障害に対する森田療法の考え方を示します。森田療法では病気を心配する背後に「健康でありたい気持ちが強い」(=生の欲望が強い)と理解します。不安と欲求とは表裏一体のものであり,その両面を有することが自然な心のあり方です。このような自然な感情としての不安を排除しようとすればするほどますます不安は増大するという悪循環にはまってしまいます。そこで森田療法では不安を排除することをやめ、不安を抱えつつ不安の裏にある本来の欲求(生の欲望)に従って行動することを推奨します。これを端的に表現した言葉が「あるがまま」です。つまり森田療法は不安に対する態度の転換を図っていきます。「病気の心配」を排除しようとせず、「病気の心配を抱えつつ」、今「本当にしたいこと」をしていくことが大事になると思います。Oさんご参考になさって下さい。
(舘野歩)

「“時間”を味方につけてみましょう」 '18.3 

Mさんは体調不良になると、なにか大きな病気ではないかと不安になり、またその不安を解消すべく全力でいろいろな方面から原因を調べるけれども不安はなくならず体調も悪い、といったことで悩んでいらっしゃるということですね。

医師の立場から少しお話ししたいと思います。医師は患者さんを診察する際、体調不良の原因として、かぜ症候群といった自然に回復する病気から、癌や免疫疾患等の命に関わる病気まで、幅広い病気を鑑別に上げて診察を行っています。Mさんが書き込みされている通り、医師も完璧ではないでしょう。臨床経験があり優秀な医師は、自分が完璧でないことを自覚しており、初めて会った患者さんをその日に完璧に見立てるのは不可能であることを知っています。そこで、どんな工夫をしているかと言うと、“時間”を味方につけることです。自然回復が見込まれる患者さんの場合は、再診までの間隔を空け、この患者さんはなにか病気が隠れていると判断すれば、再診までの間隔を短くします。いわゆる“経過観察”というものです。“経過をみる”ということも立派な治療であります。

Mさんは体調不良になり医師の診察を受けた際、100%の保証を求めていないでしょうか?実は医師も常に不安を抱えています。“時間”を味方につけて日々の診療が適切に行われるように工夫しているのです。次回診察を受ける際に医師に聞いてみるとよいかもしれません。医師と信頼関係が築けるとよいと思います。

それから、Mさんは不安になるとインターネットで体調不良の原因を調べられるのですね。インターネットは便利な道具ですが、嘘も本当も混じっています。薬のことも賛否両論いろんな考えがインターネットには載っていると思います。Mさんもご自覚されていると思いますが、調べれば調べるほど不安は増強するものです。インターネットに割く時間を○分と決めて切り上げ、不安な気持ちはそのままに、その日やるべきことに意識を向けられるとよいでしょう。

森田療法の言葉を借りれば、不安の裏には生の欲求があるということ、不安を抱えながらも建設的な生活を実践することにより、生の欲求が賦活されるということです。

Mさんは、病気の不安がもし無かったら何をしたいですか?“時間”を味方につけ、生の欲求を発見し生かすことができるようになれば、きっと生き生きとした生活が実現できるでしょう。そう願っています。
(鈴木優一)

「死を恐れるのは生きたいためである」 '18.2 

Hさんは、もともと心配性であったのが、お子さんを出産されてから病気が非常に怖くなり、実際毎日身体のどこかしらに痛みや違和感があるとのことでした。それゆえ、症状をインターネットで一日中調べ、悪い病気と繋げては落ち込んでしまう毎日に悩んでいると書き込まれています。

出産後にこうした悩みが強くなっているのは、お子さんのためにも自分がここで病気になったら大変・・・という気持ちがあるからではないでしょうか。つまり、母親としてしっかりしなくては、健康でいなければ・・・という気持ちが強くなった分、「万が一・・・」と心配がつのっているのかもしれませんね。心配になると、どうしても意識は体調の変化に注意が向いてしまいます。おそらくHさんの場合も、朝起きた瞬間から体調をチェックし始めて、逆に体調の些細な変化に敏感になってしまい、ますます違和感を強めてしまっているのではないでしょうか。森田はこうした注意と感覚がお互いに強め合ってしまうことを精神交互作用と呼んでいます。まさに不安ゆえに一層体調不良を探し出し、かつそれを強めてしまうというわけですね。

ではどうしたらいいでしょうか。森田は「死は恐ろしい。恐れまいとしても無理である」「少年時代から四十歳頃までは、死を恐れないように思う工夫をずいぶんとやってきたけれども、『死は恐れざるを得ず』ということを明らかに知って後は、そのようなむだ骨折りをやめてしまったのであります」と述べています。ではどうして私達は死ぬことが怖いのでしょうか。森田は「死を恐れるのは、生きたいためである」と答えています。生きたい、健康に過ごしたいという欲求があるからこそ、死はとてつもなく恐ろしいものになってしまうのです。とはいえ、私達の命には限りがあるものです。だからこそ、1回きりの人生をどのように生きるのかが重要になってくるということでしょう。

Hさんの場合も、母親になり、大事なお子さんを授かったからこそ、これまで以上に健康でありたい、病気が怖いという意識が強まったのだと思います。では病気にならないためにはどうしたらいいのでしょう。残念ながらこの問いに対する『絶対、確実』な答えはありません。規則正しく、バランスの良い栄養を取って、適度に運動をして・・・という心がけが出来るくらいでしょう。折角大事なお子さんを授かったにもかかわらず、大方の時間を病気の不安とそれを払拭するためのネット検索に費やしてしまったら、お子さんと心を通わせ、触れ合う時間はなくなってしまいますよね。

お子さんを大切に思う気持ちを、「今しかない」お子さんとの時間に活かしてあげることが大事なのではないでしょうか。不安材料を探してばかりでは自分でストレスを生み出すことになってしまいます。お子さんのために出来ることを実行し、共に笑い合い、ご家族と共に子供の成長を喜ぶことこそが、Hさん自身の心身の健康に最も効果的だと思います。
(久保田幹子)

「過敏性症候群〜診断は同じでも病状によって対応は異なります〜」 '18.1 

今回はお二人の方が過敏性腸症候群での悩みを挙げられていたので、それについて取り上げます。同じ診断でも病状によって対応は異なります。

まずはMさんですが、かなり大変な状況ですね。体調不良に加え、子育て・お父さまの看病などに追われていらっしゃいます。過敏性腸症候群だけでなく、体の痛みも出ており、さらに気持ちも落ち込んでいるということですね。過敏性腸症候群は自律神経の失調症状ですが、このような症状が長引くとうつ状態に至ることがあります。Mさんの場合、うつ状態かどうかはわかりませんが、まずは負担を軽減したほうが良いでしょう。ご主人といると落ち着くという事ですので、ご主人と共にお子さんの子育て、お父様の看病について負担が軽減できないか考えてみてはどうでしょうか。家族の中で負担軽減が難しい場合は役所での福祉サービスなどが利用できるかもしれませんので、お二人で相談に行かれるのもよいかと思います。主治医にも眠れないことや気持ちの落ち込みについて伝えてみましょう。

落ち込みが多少改善してきましたら、森田療法を生活に活かしていけます。お腹の不調、身体の痛みがありながらもやりたいことがあるだろうか、など自分の中の「〜したい」を大切に感じてください。Mさんはとても真面目な方なので今はおそらく人のために生きていらっしゃいますが、自分のための時間も大切にしてください。自分を大切にすることが、家族にとっての喜びにもつながります。やりたいことを実現できていくと、「不快なものを取り除きたい」生活から「楽しいことを行う」生活に変わっていくでしょう。

もう一人はSさん、高校生ですね。「おならが気になる」、これは思春期の方で悩まれている方が多い症状で同じく過敏性腸症候群の一つの型です。 一般的に静かな状況になると「おならをしてはならない」という気持ちになる →おならをしないため精一杯努力するようになる →それにより注意が集中して益々おならが出ないか気になる →緊張するとお腹の動きが活発になり、おならが出やすい状況になる(自然な現象です) 上のような状況はまさに森田療法の「注意の集中と身体症状の悪循環」ですね。まずおならが出るとどうなってしまうのが心配かを自分に問いかけます。おそらく「周囲の人に迷惑をかけないか」「自分が嫌われるのではないか」という心配・恐怖が背景にあるかと思います。しかしその恐怖の裏には必ず「生の欲望」があります。「人と仲良くしたい」「人に好かれたい」などの気持ちがあるからこそ、症状を気にするのです。「人と仲良くしたい」気持ちは失くせないため、症状が気にしないのは難しいでしょう。気になりながらも、目の前の行動を避けないことがポイントです。おならは自然な生体反応なので、コントロールすることはできません。おならを鳴らしながら自分のやりたいことを避けずにやっていってください。
(大久保菜奈子)

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