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症状別アドバイス集

その他の部屋

「怒る感情を抱えてお子様に耳を傾ける」 '10.12

お子様が中学に入ってからの言動に早く気付けばこのようなことにならなかっただろうに、、、というような後悔の念が伝わってきます。そして御自身もそのことでうつ病になってしまい、さぞかし大変な状況でホームページに書き込みをされたのですね。うつ病とのことですのでおそらく抗うつ薬を中心とした薬物療法を受け休息をしていると思います。これからのアドヴァイスはうつ病が回復してきてある程度動けるようになってから実践してみてください。

お子様が不登校になると、その原因探しを行いがちです。例えば御自身の育て方や接し方が悪かったのではないか、といったことです。確かに今までの中一からの経過をある程度把握することは大事ですが、あまり今までのマイナス面にばかり注意が向いてしまうと御自身の怒りが大きくなり、怒ってばかりいるとお子様の健康的な面が隠れてしまいます。まず怒りたい感情を抱えつつお子様が苦手なことを引き受けてしまった理由を聞いてみてはいかがでしょうか?そこで友人や先生から色々言われるのが嫌で断れないことがあったのかもしれませんね。そこはおっかなびっくりでも苦手な分野のキャプテンをやんわりと断るように言うことをアドヴァイスするのもひとつの方法かもしれません。御自身はお子様が不登校になり自責的になりがちでしょうけど、お子様のことばかりに意識を集中せず、うつ状態が回復してきていれば少しずつお仕事へ目を向けられてもよろしいのではないかと存じます。このように最近の森田療法では、親子間の悪循環からいかに脱出するかも扱っています。講談社健康ライブラリーから出版されている「親子療法 引きこもりを救う」(北西憲二著)を参考になさってみてください。お母様、お子様とも回復していくことを祈っております。
(舘野歩)

「慢性うつ(遷延化したうつ病)とは」 '10.11

SHさんは慢性うつで悩んでいらっしゃいます。そこで、今回は慢性うつ、あるいは遷延化したうつ病について、説明させていただきます。
一般に慢性うつ、あるいは遷延したうつ病は、長い期間うつ病を患ってはいますが、急性期にみられるような強い抑うつ感、じっとしていられない・落ち着かないといった焦燥感、眠れない、食欲がないなどの症状はある程度改善してはいるものの、今ひとつ気分が晴れない、興味や関心がもてない、などの症状が続いているようなものを指しています。
このように、慢性化・遷延化してしまう原因は様々なものが考えられます。一つは病気そのものが長引きやすいタイプである場合です。気分変調症や双極性障害II型などがこれに当てはまります。その他の原因として、薬物療法が合っていない、薬の量が少なすぎる、など薬物療法がうまくいっていない場合もあります。これは、患者さんが薬物療法に強い抵抗を示したり、拒否的になっていたりすることも含まれます。また、職場や家庭など生活環境の中に持続的にストレスが存在する場合もあります。例えば、クレーム処理係のような職種の人は仕事そのものが持続するストレスとなっており、このような場合は職場の環境調整などが大切になってきます。
さらに、慢性化・遷延化の原因の一つとして、本人の性格傾向や生活スタイルが関与していることがあります。例えば性格傾向としては、几帳面で完全主義で、神経質性格と似て「○○はこうでなくてはならない」といった「かくあるべし」の構えが強い方です。このような方がうつ病にかかると、仕事や家事などがいつも通りちゃんとできないから「もっと頑張ってちゃんとやらなくてはならない」と考えて、ますます疲労が蓄積していき、エネルギーを使い果たしてしまいます。結果として、ちゃんと出来ない事で自信もなくし、無力感にさいなまれ、さらに抑うつ症状が悪化するといった悪循環となることがあります。こういった場合には行動の仕方や心の構えを変化させることが重要となり、それには森田療法的な考え方が十分役に立つと思います。
まずは、何故にうつが慢性化・遷延化しているのか、を主治医の先生と一緒に相談してみることからはじめてみてはいかがでしょうか。
(谷井一夫)

「森田療法における日記の記載の仕方について」 '10.10

Bさん、こんにちは。日々の日記を拝見しました。丁寧な記載から、生活の様子、家族の様子がしっかりと伝わってきます。一生懸命、取り組んでいらっしゃいますね。Bさんも御存じだとは思いますが、森田療法での日記の書き方を簡単におさらいしましょう。

(1)一日の生活の事実(行動の事実)をまずしっかりと記載する
(2)症状および愚痴は極力記載しない
(3)行動の事実とともに、その時々の感情も記載して良い
(4)分量は多くてもノート1ページ程度が望ましい

以上が日記を書く際の要諦になりましょう。

森田療法の基本は、不安や気分に左右されずに、必要な行動に踏み込んでいくというテーゼにあります。つまりは気分本位ではなく目的本位の行動を目指すのです。そのためには、日記自体も不安、症状、気分に左右されたものではなく、行動の事実を記載していくことを必要とする訳です。ただ誤解をしていただきたくないのは、“森田療法はただ行動すれば良い”という理解では困ります。森田療法は自己自身の不安を受け止めながら、生の欲望にのっとってしなやかに自己実現をはかっていくことが大事なポイントです。また、不安や愚痴を極力、記載しないという考えはどのような観点からきているのでしょうか。つまりは、不安や愚痴を口にすること(言葉にすること)そのものが、その不安や愚痴への”とらわれ”を強めてしまうからです。

森田療法の基本は先程の「気分本位から目的本位への行動を心がけること(生の欲望にのっとってしなやかに自己実現を図っていくこと)」の他に、「とらわれの打破」が大きな目的としてあります。不安や愚痴、気分に注意と集中が向いてしまい、本来注ぐべき対象に注意と集中が向いていない状態を”とらわれている状態”と言います。こうした「とらわれの打破」とは不安や愚痴、気分に向けられてしまっている注意と集中を本来、注ぐべき対象に転換していくことを意味します。故に”とらわれ”を助長してしまう不安、愚痴、気分を語る事を戒めている訳です。こうした「とらわれの打破」の先に我々に見えてくるのは目の前の「事実」のみになります。また、長く書けば良いというものでもなく、要点を簡潔に記載していくことも大事になってくると思います。以上、参考にしていただければ幸いです。
(川上正憲)

「親しき仲にも礼儀あり」 '10.9

Yさんこんにちは。Yさんはご自身の表情がこわばって、相手を不快にさせたのではないかという症状に悩まれているようですね。恐らく、内容から対人恐怖症であろうと推察します。その中で、心療内科に通いながら、何とか生活しているわけですから、苦しい中で頑張ってこられたのだと思います。

ただ症状が決して軽い状態でないとすると、まず症状緩和のために服薬をきちんと味方につけることをお勧めします。現在おかかりの心療内科の担当医に症状の程度などをきちんと話題にし、少しでも緊張を和らげて欲しいと思います。けれども、文面を拝見する限りでは、Yさんは、症状緩和だけを求めておられる訳ではなさそうです。むしろ人と少しでも接したいという思いを、心のどこかで持っていらっしゃるように思います。ここで、Yさんは「人と接したい、でも嫌われるかもしれない」という気持ちそのものを無くして過ごしたいのでしょうか。それとも「嫌われるかもしれない」という思いを持ちながら、「人と少しでも接したい」という思いを生かして過ごしたいのでしょうか。この点は、ご自身にもう一度問いかけてみて欲しいと思います。というのも、「嫌われたくない」という思いを無くそうとする時は、結果的に「人と接したい」という欲求も奪い去ってしまうことを意味するからです。この問いかけの中で、Yさんが人と接することを諦め切れなかったとしたら、次にどの段階から関わりを持つことが出来るかを実際考えていくようにしてみましょう。

私の場合、患者さん達には、はじめから仲良くなることを推奨はしていません。むしろ、「親しき仲にも礼儀あり」という姿勢のみを実践するよう促しています。「おはようございます」「ありがとうがざいます」「すみません」などの言葉だけはきちんと相手に伝えるようになどとアドバイスしています。でも、その言葉掛けにも苦痛に感じ自室に居ることが多いとしたら、現在のようなフォーラムを通じて、自分の悩みを伝えていくことがあらためて大切だと思います。苦手なものをすぐに得意になろうとするより、苦手なのだから自分の手の届きそうなところから丁寧に関わっていくことを実践していって欲しいと思います。今は苦しい最中ですが、Yさんの生活が少しずつ広がっていくことを願っています。
(樋之口潤一郎)

「妊娠と薬と森田療法」 '10.8

Pさんが強迫観念で困っています。自分や他人を傷つけるのではないかという考えが出てきて怖いということです。 妊娠されているとのことですが、大変なときこそ普段は気にならないことも気になったりするものです。そして悪循環の考え方からは不安などの症状は気にすれば気にするほど強まるものですね。

森田療法センターの外来には、薬を使わない治療法だからと森田療法を希望されて来院される方がいらっしゃいます。しかし森田療法は薬を使わない治療でなく、薬にとらわれない治療法と言うことが出来ます。治療者は薬を内服することで患者さんの生活が広がるのであれば内服を勧めます。そして、不安や緊張にとらわれず生活できるようになり、必要なくなれば減薬を勧めます。Pさんは鋏を使ったりするにも症状のために混乱してしまうこともあるようです。入院も一案ですが日常生活にも支障があるようであれば薬を用いることも考えてみられてはいかがでしょうか。薬による胎児への影響を気にされているのだと思いますが、薬の種類や内服する時期によっては影響が少ない薬もあり、妊娠中でも内服されている患者さんはいらっしゃいます。

発達障害もあるとのこと、発達障害の疾患によっては強迫観念の症状との関連も考えられます。治療されているようでしたらかかりつけの先生と薬も含めた治療についてよく相談されることをお勧めします。
(矢野勝治)

「女性には必ず訪れる・・更年期と森田療法の知恵」 '10.7

Cさんは、「女性には、更年期という厄介な時期が来ます」と書かれています。

更年期は「閉経の前後5年間」と定義されています。この時期には健康状態に大きな影響のあるエストロゲン(卵胞ホルモン)という女性ホルモンが加齢とともに徐々に減っていくなど、これまでにないような大きな変化が体の中で起こってきます。

この期間に訪れるさまざまな不調な症状(更年期症状)が、日常生活を送るのが難しいほどになった場合を更年期障害といいます。
典型的な更年期症状には、冷えやのぼせ、ほてり(ホットフラッシュ)、動悸、息切れ、めまい、太りやすくなるなどの身体的な症状のほか、いらいらや倦怠感、抑うつ、不眠などの精神的な症状があります。この現れ方や強さには大きな個人差があるようです。

もともとのうつや神経症に与える影響も大きく、どちらの症状か区別がつかないような場合も多く見られます。
これらが、生活していくのが難しいほどに強くなった場合は、一度産婦人科に相談してみるのがよいでしょう。ホルモン補充療法を行なう場合、Xさんのように漢方薬を用いる場合などがあります。 そして、この時期に起こるさまざまなこととどう付き合っていくか、考えてみましょう。

森田先生が風邪で高熱があるときは往生して寝込み、少しの熱のときは弟子に口述筆記をさせ、もう少し軽い時は起きて読み物をし・・と、その時の体調に応じて動かれていたという有名な話があります。
つまり、高熱のときは寝込むことがバランスがよく、少しの熱のときは話して聞かせるくらいの動きがバランスが良いのです。「自然に服従し境遇に従順なれ」という言葉もありますね。
100か0かではなく、そのときの自分の体調や状況とバランスの取れた、その時にできる行動を探っていきましょう。このとき以前の自分の動きを「かくあるべし」にしないことも大切です。

更年期こそ、森田療法の養生が生かせるときかもしれませんね。
更年期は親の介護、夫婦の問題、子の自立、自分や身の回りの人の病気・・など、さまざまなライフイベントも重なりやすい時期です。仕事でもこれまでとは違う仕事の仕方を探っていかなければならない時期です。

フォーラムでは女性たちがエールを送りあっています。
「ごちゃごちゃしたまま前進」というAさん、「自分を追い詰めないことで周りの家族も結果良かれとなるのではないでしょうか」というCさん・・。
悩んだら水回りの掃除をするというCさんのやり方もとてもいいと思います。何かで「気持ちが落ちた時は蛇口などの光る部分の掃除をすると良い」という記事を読んだことがあります。面積も小さく、光って結果が見えやすいのでこれもお勧めできます。(「やれた」ことに目が向きにくくなっている場合が多いので。)その時にできる小さな行動を積み重ねて、しんどい時期を乗り切っていきましょう。
(塩路理恵子)

「自分に優しく」 '10.6

Oさんは、うつ状態で出社が困難になってしまったことを悩んでおられます。以前は人事・総務のリーダーを務めていたとのことですが、異動後に、ポジションの責任、不慣れな業務について周囲に聞くことが出来ずに抱え込んだ結果、業務の遂行が滞り、不安も重なり出社が段々不可能になったとのことでした。またBさんはうつ病のために仕事を辞め、療養をしてそろそろ復帰を考えているとのことですが、途中で具合が悪くなるのではないか、人とうまく話せないのではないかなど、不安がいっぱいと書かれています。このように、このフォーラムでも、「うつ」についての相談が目立ちますね。それだけ、うつ状態に陥る方が増えているのでしょうし、何よりそうした悩みに森田療法が役立つということでしょう。

うつ状態に陥る方は、元来真面目で責任感が強く、自分の役割をきちんと果たそうとします。自分に対する要求も高く、失敗を受け入れることが出来ません。それだけ自分に厳しいとも言えますし、人に頼ることが下手とも言えます。人に頼ったり、失敗したりする自分はダメな自分と考えてしまうからですね。しかし、何もかも完璧にこなせるような人間はいないのも事実です。先程のOさんの場合も、異動後の新しい仕事を周囲の助け無しに遂行しようとしたために、自分を追い込んでしまったのでしょう。

自分を追い詰めてしまう考え方は、復職する際にも足かせになります。「休んでいたのだから、復職したらちゃんと挽回しなければ・・」「今度こそ失敗しないようにしなければ・・」と、知らず知らずのうちにまた高い要求を自分に突き付け、かつすぐに結果を出そうと焦ってしまうのです。そうなると、Bさんのように、逆に失敗する場面を想像して予期不安を強めてしまうわけです。では「こうあるべき」と考えて焦ってしまう自分とどのように付き合えばいいのでしょうか。

日々の生活は、短距離走のようにはいきません。長く続くマラソンの道のりです。まして体調を壊していたのですから、走り始めはゆっくり、自分の様子を見ながら走るというのは当然のペースでしょう。ペースは段々に上げていく、そしてきちんと途中で給水し、また時にはペースを落とし、体力温存に努めることです。思い描いている自分の姿には、最終的に到達出来ればいいのです。シンプルに言えば、これまで自分がやってこなかった関わり方をしていくことです。つまり、自分にもう少し優しくしてあげること。なかなかすぐにはイメージがつかめないかもしれませんが、Cさんが良い書き込みをして下さっていますね。「フォーラムに書き込めば聞いてくれる人がいる」「自分をいたわって・・」と。荷物は一人で背負わずに分けること。弱い自分を隠すことにエネルギーを使うのではなく、弱い自分をどうフォローするかを考え、そこにエネルギーを注ぐことです。小さな目標を具体的に立てて、階段を一段一段上るつもりで取り組むことが、結局遠回りのようで近道になります。結果は、「すぐに」ではなく、「いずれ」出すつもりで。
(久保田幹子)

「現代的な"うつ病"をめぐって」 '10.5

Sさんは「うつと仕事」について率直な感想を記し、その中で,ひきこもりの人の心情に共感を寄せられました。Sさんは2年間の休職をはさみながらも約20年間,うつを抱えながら仕事を継続されたということですから、いわゆる「ひきこもり親和型」とはだいぶ異なる方のように推察しますが、それでもひきこもりはどこか他人事とは思えない点があるのですね。。またMさんも、ひきこもり70万人というショッキングな報道を取り上げられました。

そこで今回は、うつ病の中でも従来のタイプよりひきこもりの心性に近いタイプ、昨今若年層にひろがる現代的な「うつ病」(メディアでは新型うつ病とも呼ばれています)について記しておくことにしましょう。
こうしたタイプの人々は、気分の落ち込みよりも、疲れやすい、だるい、集中力や気力がわかないという訴えが主であり、従来のうつ病のような自責感が目立たず、職場への帰属意識や仕事上の役割意識が希薄であることが特徴に挙げられています。またひとたび休職に入るとなかなか職場に戻ろうとしない、休んでいても趣味の領域などには案外意欲的に取り組むといった点から、しばしば我がまま、自己中心的、他罰的な性格に起因するとみられがちです。
たしかに自己中心的と言いうる側面もあるのですが、原因を性格だけに求めるべきではないと私は主張してきました。それというのも、こうした現代的な「うつ病」が増加した背景には、1990年のバブル崩壊以降、若年層を取り巻く雇用・労働環境の悪化が存在するからです。彼らの「やる気が出ない」「疲れた」といった訴えの底には、仕事に対する士気の阻喪を認めることができるのです。

このように社会的,経済的な要因が絡んでいるだけに、現代的な「うつ病」に対しては休息と薬物だけではなかなか効果が上がりません。彼らが無力感から脱し,環境に対して能動的に働きかけていかれるような心理的援助が必要とされています。私たちは、現代的な「うつ病」の人々も入院森田療法の環境において、他の患者さんたちとの関わりの中で作業に携わることによって、無気力症状が速やかに改善に向かうことを経験してきました。こうした経験を踏まえて、現代的な「うつ病」の人には次のような助言をしています。

1)これまでのような気ままな休養生活から脱して、徐々に行動を増やしていく事
2)起床、食事、活動、就床の時間を一定にして生活リズムを整える事
3)グループによる治療環境を利用していく事
4)薬物は補助手段として位置づけ、薬だけで問題の解決を図ろうとしない事
などです。

そして社会復帰の段階では、本人が一歩距離をおいて仕事を見直した上で、当面どう折り合いをつけていくかを自ら選択することが鍵になると考えています。リスクを承知で転職を目指すという選択もあれば、趣味の領域を大切にしつつ、ほどほどに今の仕事を続けるといった選択肢もあり得るでしょう。要するに,「うつ病」の経験をきっかけに,これからの生き方を自分なりに選び取っていくということが大切なテーマになるのです。
(中村敬)

「更年期に対する森田療法」 '10.4

更年期女性の様々な訴えをまとめて更年期障害と呼ばれますのでそこには様々な病態が含まれます。更年期障害の症状には、女性ホルモンの減少を主とする症状と、心理社会的要因を背景に持つ症状の2つに大きく分けられます。

前者は、のぼせ(ホットフラッシュ)・汗をかくといった血管運動神経症状が代表的です。後者は環境要因と性格要因が重なって起き、不安や抑うつ、のぼせや汗をかくこと以外の自律神経症状が主です。更年期以降は健康に自信がなくなったり仕事を持っていると定年までの働き方を考える必要に迫られたりします。さらに年老いた親の介護や死、時には自分の病気により、今まであまり考えなかった老いや死について考えることが多くなります。このように更年期は喪失体験が多く出現する時期です。

治療についてですが、女性ホルモンの減少からくるのぼせや汗をかく症状に対してはホルモン補充療法が有効とされています。心理社会的要因を背景に出現する症状に対して森田療法的な考えが生かせるでしょう。更年期に起こる様々な変化を受け止められず、更年期以前の自分と現状のギャップに悩んでしまい、ますます症状へ「とらわれ」ていらっしゃる場合です。更年期から老年期へ向けて死の恐怖が出現することは逆にそれだけこれから健康に生きたい欲求が強いわけです。その欲求を現実に即した形で発揮されていくと良いかと思います。

更年期女性を対象にしたある調査からは「ほとんどの女性は更年期を向かえむしろそれまでのストレスから解放されたと感じている」との結果が出ているそうです。更年期での喪失体験のみへ目を向けるのではなく、それまでのストレスから解放されるところへも注目し、これからの生き方を模索していくことが大事でしょう。Kさんの場合、現在ホルモン値が正常ですし、森田療法の知恵を生かしていかれてよろしいかと思います。今後ホルモン低下がありのぼせや汗をかく症状が出て来た時に、ホルモン補充療法をするかどうかを婦人科の先生と相談されていけば良いでしょう。
(舘野歩)

「現実感のなさについて」 '10.3

Aさんは不眠、集中力低下、うつ状態、不安感、現実感のなさ、などの症状があり、不安神経症と診断されましたが、統合失調症との違いが気になっていらっしゃるようです。実際に私が診察をしているわけではないので、はっきりとした事は言えませんが、考えられる事を述べていきたいと思います。

Aさんの症状の中で最も分かりにくいものは「現実感のなさ」というものだと思います。この症状は離人感というものかもしれません。離人感というのは、周囲で起きていることがなんとなく自分が活動していることと離れていて、生き生きとした実感がないようなもので、中には自分が自分でないような感覚がするという方もいらっしゃいます。Aさんが心配されているように、この症状は神経症以外にもうつ病やその他の病気にも現れる事がありますし、それぞれに治療の方法は異なっています。

しかし、Aさんは現在、少しずつ回復されていて、お仕事もされていらっしゃいますね。そうであるならば、診断や治療方針が大きくずれているとは考えにくいのではないでしょうか。ただ、それでもやはり心配だということであれば、今おかかりの主治医に率直に聞いてみるのがよいと思います。
(谷井一夫)

「自己自身との折り合い」 '10.2

KOさん、こんにちは。「初老期の鬱状態ではないか」とお悩みのようですね。文章を拝見しますと、幾つかの身体的変化や、抑うつ的な気分、自信の低下、悲観的思考などがみられるようですね。お考えのように鬱状態である可能性がありますから、お近くの心療内科、精神科でご相談することをおすすめします。状態が悪くなってからですと、治療に時間がかかっていますことがありますから、早めにご相談することをおすすめします。

多くの皆さんがうつ病に関する基本的な知識は知ってらっしゃると思いますので、ここではそうした点には触れないことにします。そこで、ここでは鬱状態を来たす要因の1つとなり得るライフスタイル上のテーマについて簡単に記したいと思います。KOさんは加齢による身体的変化を感じていらっしゃるようですね。

こうした自己自身の身体的な変化(老いに伴う自然な身体的変化)、例えば、これまでなら何の苦労もなく出来ていたことが、ある頃より非常に疲れるようになってしまった。「こんなはずはない」と自己を鼓舞して取り組むのだが、何度やっても、疲労がつのるばかりで、そうした自分を情けなく感じてしまい、だんだんと焦りを強く感じてしまう、気がついたら、体がいつもだるくて気分もさえなくなってきてしまった。最初は、体の病気かと思って内科を受診したが、特に問題はないと言われ、念のために心療内科を受診するように言われ、心療内科を受診した。こうした流れで心療内科を受診される方も多くいらっしゃいます。さて、こうした自己自身の身体的変化(老いに伴う自然な身体的変化)をむかえて、その現実と、自分のこれまで描いていた自己自身の姿とのギャップに悩まれ、鬱状態を呈する方がいらっしゃいます。ここでは「老いに伴う自然な身体的変化」というライフスタイル上のテーマに直面していると言えましょう。

人間は人生上、多くの課題に直面して生きています。例えば、ある女性の方は、「夫が無事、定年を迎えたと思っていたら、夫の定年から数ヶ月をした頃から、なんだか気分が憂鬱で、何をするのもおっくうになってしまった」と悩まれ、心療内科を受診されました。
お話を詳しくお伺いすると「これまで昼は夫が仕事に行っていて、その間は、ある意味で自分の自由に時間をやりくりして生活していたが、夫が毎日、家にいるようになってから、昼もご飯を作らなければならず、すっかり生活のペースが変わってしまった」とお話されました。こうしたこれまでとは異なる生活スタイルへの変化が鬱状態を来たす1つの要因となったと言えましょう。
個人個人の元々の性格傾向、生い立ちがあって、そこにそれぞれの生活環境があります。常に我々は「自己自身(心身)」と「環境」との兼ね合い(相互作用)の中で、心身のバランスをとらなければなりません。こうした自己自身(心身)と環境とのバランスを考えるにあたっては、常に「どのように自己自身との折り合いをつけていくか」というテーマがあるように思われます。こうした自己自身が考える理想と、等身大の自己自身とのギャップ(理想と現実のギャップ)をどのように考えていったら良いのでしょうか。

解決の方向性には、等身大の自己自身の姿(例えば、上述の「老いに伴う自然な身体的変化」、「夫の定年に伴う生活スタイルの変化」などに直面している)を現実の事実として認識し、つまりはその等身大の自己自身をあるがままに受け止めながら(その過程には悲しみや怒りなど様々な感情が伴うことと思います)、自分なりの目標に向けてコツコツと取り組んでいくことが要請されます。
人間が困難に遭遇しているという1つの事実は、これまでとは違う生き方の模索が我々に要請されている可能性があります。頑なな姿勢ではなく臨機応変な姿勢が求められていると言えましょう。困難は大変つらいものですが、良い意味での「変化」が自己自身にもたらされる可能性のある1つのチャンスと言えるかもしれません。
(川上正憲)

「症状以外に目を向けてみる」 '10.1 

Xさんが娘さんに対する加害恐怖で悩んでいます。
あってはならない考えを抑えようとするあまり、逆にそのことにとらわれて悪循環に陥り、気持ちも沈んだりするのだと思います。しかしその考えは娘さんを大切に思うことにより生じるものですね。
大事なことは、直接考えを抑えようとするのではなく、このような症状の背後にある考え方や心のあり方に気付き、そのとらわれを打破することです。

娘さんに関する症状が秒単位で出てくるとのことで大変だと思います。しかし毎日が育児との闘いになっていませんか。そこで育児以外のことに目を向けてみるのがよいかもしれません。日々の家事のなかにも症状のためにやらずにいたことがあると思います。視野を広げてそのようなことにチャレンジしてみましょう。すると今まであまり感じなかった実感や周囲の風景が生き生きと感じられたり、 またこれまでのように症状に労力をかけなくて済むことや、その分ほかのことを楽しめることに気付くかもしれません。

つまり注意が症状や育児以外に向くようになることが、症状をそのままにしておけること、さらには自分本来の健康的な欲求に気付いたり発揮したりすることに繋がったりします。是非やってみてください。
(矢野勝治)

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