森田療法には、大きく「入院療法」と「外来療法」の2つがあります。森田療法は元来、入院療法が基本でしたが、入院先などの問題もあり、最近では通院治療(=外来療法)が中心になりつつあります。
したがって重度や長期の方には入院療法、比較的軽度で短期の方には、通院による外来療法が基本となっています。
また、森田療法には、それ以外にも森田療法を相互に学習する自助グループ・生活の発見会や当財団ホームページにある、体験フォーラムなどの相互扶助コミュニケーションなどの活用方法もあります。
入院療法は、第1期〜第4期までの治療期間で構成されています。
絶対臥褥(ぜったいがじょく)期ともいい、患者さんは終日個室に横になったまま過ごします。食事、洗面、トイレ以外は一切の気晴らしは禁じられます。あらかじめ患者さんは「不安や症状は起こるままにしておく」よう指示されます。
最初の1〜2日は心身の安静が得られますが、3日〜5日目頃には過去や将来に様々な連想が広がり、しばしば強い不安や苦悩に襲われるようになります。この時に不安をそのままに堪え忍んでいると、悩みが急速に消失することもあり、これを森田療法では「煩悩即解脱」と呼んでいます。
その後6〜7日目には退屈を感じて心身の活動欲が高まってきます。これがその後の治療の足がかりとなるのです。
軽作業期と呼ばれ、4日〜1週間程度の期間です。心身の状態を多少欲求不満状態において、活動欲を促すことが目的とされます。患者は庭に出て外界の観察を行い、徐々に軽い仕事をしていくのですが、作業に関しては外から課すのではなく、自発的に気づいた事に向かわすのが原則です。
またこの時期から日記指導を行い、週に1〜3回程度、主治医との個人面談も行います。この頃には不安が再燃したり、作業に疑問を抱いたりと心が揺らぎやすい時期にあたります。
この時に、不安や疑問をそのまま抱えながら体験を積み重ねるよう指導されます。
重作業期とも呼ばれ、1〜2ヶ月間程度、弾力的に設定されています。軽作業期とは違い、他の患者さんとの共同作業が大きなウェートを占めるようになります。具体的には、小動物の世話、園芸、木工や陶芸、料理など様々なものがあり、起床、配置、風呂掃除などの当番も分担します。
この時期の目的のひとつは、仕事に対する価値感情を棚上げにして、何にでも取り組み、達成感を体験することにあります。またこの時期はテンポのよい現実に即した臨機応変の態度も指導されます。
この過程は実践を通じて、患者さんの症状中心のあり方から事実に即した態度へと転換をはかることが目的となります。
第4期は社会生活への復帰期であり、1週間〜1ヶ月程度です。この時期は外出、外泊を含めて社会復帰への準備期にあてられ、事情に応じて院内からの通学、通勤なども許可されることもあります。
患者さんは主治医などの治療者から日記指導による治療が中心になります。また森田療法の自助グループである、生活の発見会などの集団学習会を活用する場合もあります。
日記指導は、主としてその日の行動の記載をします。ポイントとしては、毎日の行動の事実を中心に記載し、その時の感情や気分にとらわれないように注意を促します。そして毎日の行動を日記につけ次回の受診時に治療者に見せます。治療者は森田療法の立場からコメントを加え指導します。
また最近の日記療法には、伝統的な森田療法のそれとは異なるやり方も実践されています。例えば治療を始めるに当たり、患者に「どんなことであっても、それが症状であっても、不満であっても、怒りであっても、感じたままに書くこと」を勧めます。それはその人がさまざまな感情を中心に、行ったこと、考えたことなどの体験を一日の終わりに振り返り、それを見つめて、主体的に書くことを重視するからです。
また、伝統的な入院森田療法では臥褥期が終わり、軽作業期から日記療法を始めます。入院者はその日の夕方に日記を記載し、次の日の朝に治療者に提出します。治療者は毎日それについて森田療法の立場からコメントを加えます。
【日記指導の意味と効果】
入院治療と外来治療の他に、それらの治療法と並行して利用したり、補助的に活用して効果をあげる、第三の治療法として、自助グループやインターネット掲示板を活用した体験フォーラムなどの相互扶助組織があります。
これらは、共に森田療法を学び克服した人たちが、ボランティア精神を発揮して
自主的に、自らの経験や意見、アドバイスを今現在悩む人に伝え、相互に意見交換をしながら、悩みの克服に役立てるものです。
実際に悩み、克服した経験に根ざしているため、相互理解も得られやすく、現在悩んでいる人も、相談しやすい等のメリットがあります。