メンタルニュース

メンタルニュース NO.18

神経症のセルフヘルプ・グループ
生活の発見会

神経症(神経質症)に悩む人たちの自助グループとして、「生活の発見会」が知られています。
この会は、森田療法の理論をおたがいに学びあう会員組織で、全国的な規模の活動を展開しています。
本紙今号は、その活動概要を紹介する「生活の発見会特集号」といたします。

ひとりで悩んでいないで?。
(「生活の発見会・案内 パンフレット」から抜粋)

・人前でドキドキして話ができない。
・視線が気になり相手を見られない。
・夜眠れなくて苦しい。
・不安で電車に乗れない。
・心臓が急にとまるのでは??。
いま、あなたはこんな悩みをもち、なんとか克服したいと、人知れず努力を続けています。しかし、その願いはかなえられず、さらに悩みは深くなっていった。
では、あなたの悩みはどうすれば解決するのでしょうか。生活の発見会は、あなたが悩みを解決し、健康な日常生活が送れるように援助します。森田正馬博士(慈恵医大名誉教授、1874〜1938)が創始した、森田精神療法理論(略称・森田理論)にもとづいて―悩みを克服した人たちが、同じ悩みをもつ人とともに、互いに助けあいながら、実生活をしつつ学習を深め、悩みの解決をはかっていくのです。

「生活の発見会」に寄す

――現代社会に求められるもの――
森田療法研究所・所長 北西 憲二

現代はストレスの時代であり、多くの人びとはさまざまな心の悩みを抱えている。また、人間関係のきずなが弱く、家庭的・社会的基盤がもろくなっている現代人は疎外感に悩んでいる。
それゆえストレスや心の悩みに対して、自分なりの対処行動をうまくとることができない。そのことがますます悩みを深め、疎外感を増長する。
そのストレスを処理するには、人との親和関係、家庭や地域のサポート、そしてそれに支えられた自助的努力を必要とする。しかしこの現代社会では、個人の悩みに対する耐性も弱くなっており、多くの人たちが苦悩をもちながら、その出口を見いだせないでいる。
これらの人たちにとって重要なことは、その危機をみずから乗り越えることである。自助にまさる治療はない。何よりも克服への努力そのものが、その人の成長につながるからである。
さて、森田療法の創始者である森田正馬は若き頃、いわゆる神経衰弱に悩んでみずから克服した経験をもつ。森田療法とは森田自身の自己治療の経験を、体系化したともいえる。それゆえ治療的理念や技法には、自助的側面が多く含まれている。
つまりその成り立ちからいっても、森田療法には精神療法という「医学的モデル」と、自助あるいはメンタルヘルス、さらには生き方のモデルという側面を強調した「社会的モデル」が存在する。両者は森田療法を支える車の両輪であるといってもよい。この一方の大きな輪が、生活の発見会であることはいうまでもないであろう。
そして、もろい面をもつ現代人にとって、生活の発見会(通称、発見会)の果たす役割は、ますます大きくなっていくにちがいない。すなわちこの活動をとおして自助の勧めと同じように、悩む人びとの連帯、人間的なきずなが形成され、そのことが現代人の援助となり得る、と思われるからである。
このように発見会の果たす役割は大きいが、さらにそれが確固たるものとして飛躍を遂げるには、専門施設との協調協力は欠かせないであろう。この発見会と専門施設は、補い合う関係で両者の交流をとおしてのみ、森田療法の健全な発達は得られると私は考えている。
そのとき両者は、統合的で多面性をもつ森田療法の、どの側面を重視して活用しているのか、この点をはっきりさせていくことが重要だと思う。つぎに、それぞれの対象者の範囲を明らかにする必要があろう。それにより悩む者への適切な助言を可能とする。さらには、外来森田療法と発見会活動との協調の模索が望まれる。
これらについて、お互いの「利点と限界」を明確にしてこそ、真の協調が生まれる。そしてこの協調関係が、国際化や森田療法の普及に重要な意味をもつものと信じている。

(「きたにし・けんじ」精神科医。著書=『実践森田療法』〔講談社〕『軽度・神経症を治す』〔法研〕ほか。)

生活の発見会にはこんな活動がある

生活の発見会(略称=発見会)は会員組織によって運営されています。以下、その主な活動のあらましを紹介してみましょう)、がそれです。

*機関誌「生活の発見」発行
毎月会員におくられる「生活の発見」誌(A5判、約90ページ)には、森田理論の研究、解説および学び方、神経質症をのりこえた体験記などが掲載されています。会員のいちばん身近な学習テキストであるばかりでなく、力強い心の支えとなっています。

*地区集談会
もよりの地域に住む会員の集まりで、発見会の活動母体です。北海道から沖縄まで全国150か所以上の集談会では、森田理論の学習を中心とする会合が月1回、自主的に開催されています。また大都市などでは、入会したばかりの人のための「初心者懇談会」があります。

*学習会
森田理論を、より集中的・系統的に学ぼうとする会員のために、各種の学習会が開かれています。

  1. 連続学習会
    毎週1回2時間、3か月を単位とする学習会です。テキストによる理論学習、先輩の体験発表、日記指導などが行なわれます。東京、大阪、名古屋、福岡ほか主な地域で催されています。
  2. 合宿または1日学習会
    1泊2日ないしは数日間の合宿です。参加者が寝食をともにして、学習、体験交流そのほか、親しい雰囲気のなかで学びあいます。また、1日だけの学習会も各地で開かれています。

*相談活動
相談室(東京など数か所)で面接相談に応じ、森田理論にもとづくアドバイスを行なっています(予約制・有料)。また事情によって会合に出席できない会員のために、手紙相談(有料)もあります。
※そのほか、ゆとりと心の豊かさをもとめて、地域により懇親会、趣味の同好会や、ハイキングなどが催されています。

生活の発見会ってどんな会? 生活の発見会

神経症とは
あなたはきっと心配性で、なにかにつけて不安感や恐怖心の強いかたでしょう。そして、これがあっては生きるのに不都合だから、なん
つまりあなたは、自分の状態についての反省心をもちながら、それを治そうとして逆に自分の悩みを深めてしまったわけです。ですから森田理論でいう神経症(神経質症)とは、こうした状態が心のからくりによって慢性的に固定したもので、もとをただせばだれにでもある心理です。

森田理論学習が適する人
このように苦しみながらも、何とか日常生活をつづけてきたあなたなら、生活の発見会(以下、発見会)で森田理論を学習し、それにしたがって実践していけば神経症から解放されていきます。ひいては、人間的にも大きく成長し、いきいきとした毎日が送れるようになりましょう。
神経症の症状が重く日常生活ができない人は、森田療法施設へ通院、入院されるのが良策です。また医師から、そううつ病、うつ病、またはうつ状態という診断をうけた人は治療が必要で、発見会で行なうような森田理論集団学習の適否については、医師に相談してください。
幻覚、幻聴、妄想があり、病識のない人には、森田理論学習は適しません。

神経症の3つのタイプ
さて森田理論では、神経症は便宜上、つぎの3つのタイプに分けられています。

  1. 普通神経症
    正常に機能している心身のわずかな不快感を病的だと思い、注意をそこに集中して症状が固定したもの、をいいます。不眠、頭痛、記憶力減退、めまい、肩こり、全身疲労感など、いろいろからだの異常感を訴えることが多く、心身症の一部、自律神経失調症といわれるものの大部分がこれにはいります。
  2. 強迫神経症
    特定のことを恐怖しながら、半面、その恐怖を打ち消そうとしてかっとう葛藤を生ずるもの。対人恐怖、赤面恐怖、視線恐怖、表情恐怖、雑念恐怖、不完全恐怖などのほか、なにごとにも疑惑を覚える疑惑症、ものごとを根ほり葉ほりせんさくしなければ気のすまない、せんさく癖、確認癖もこれにあたります。また、書痙(人前で字を書いたりするときに手がふるえる)も対人恐怖の一種とみてよいでしょう。
  3. 不安神経症
    急激におこってくる不安発作が主症状で、救急車を呼ぶなどの大さわぎすることがあります。発作中は心悸亢進、頻脈、呼吸困難、めまい、ふるえなどの症状をともないます。代表的なものが心臓神経症ですが、電車などに乗れない乗物恐怖もあります。エレベーターに乗れない閉所恐怖、高所恐怖なども同じです。

生活の発見会の現状
発見会は1970年に、それまでの同人組織を改め、理事会を結成しました。会員相互の助け合いによる森田理論の集団学習運動という、新しい方針をうちだしたのです。以後、おおくの会員有志の奉仕的活動によって会は運営、推進されています。
会員総数は現在、約5600人(男女比は約6対4)です。この会員数の半数以上が神経症から解放されており、また30%におよぶ約1700人が維持会員になっています。維持会員とは、学習運動のなかでその悩みから解放された体験から、この運動の発展と普及のため、発見会を支えていこうという篤志の会員のことです。

会員の症状・年齢・職業は
では、会員がかつて体験し、あるいは現に経験している神経症の症状はどのようなものでしょうか。さいきんの本会の調査(全会員)によりますと、対人恐怖と強迫神経症で52%と半数を越え、ついで普通神経症、不安神経症の順となっています(図1参照)。近年は、子育てに関する問題などで入会するひとも増えつつあります。
年齢別にみますと、40歳代が30%を占め、そのつぎに30歳代が25%で、30歳から50歳までで半数を超過していいます。10歳代はわずかです。また別に、昨年の新入会員のかたでは30歳代、20歳代の順になります。
職業別では、会社員が34%でトップ、主婦の22%がこれにつづいています。ほか職業は学生もふくめて、多岐にわたっています。

どんな悩みで入会したか
つぎに、「生活の発見」誌の体験記のなかから、どのような悩みを抱いて入会したのか、2つの例をあげてみましょう。

  1. 視線恐怖に悩むOL(29歳)
    高校卒業後、いまの会社にはいり、仕事や対人関係に気をつかうことが多くなり、社会のきびしさを痛感しました。それでもどうにか過ごしていましたが、2年ほどまえの失恋をきっかけに、すっかり対人関係に自信をなくしてしまいました。
    人と対話していると胸がドキドキして緊張し、とくに人の視線がこわくてまともに見ることができないのです。視線を合わせて話さなければ失礼になると思い、ムリに相手の目を見ようとすると、自分の目がきつくなってしまい、自分の視線をどのようにすればよいのか、まったくわからなくなってしまいました。とくに1対1で話しているときが苦しくて、相手の話の内容が頭にはいってこない状態です。
  2. 不安発作に悩む会社員(35歳)
    会社で執務中でした。突然、全身の力がぬけたような息苦しい不安が胸を締めつけ、びっくりして病院に飛びこみました。精密検査をしてもらいましたが、どこにも異常なしとの結果が出ました。不安はあったものの、2か月ほどは小康状態でした。正月の休暇で妻子を連れて車で実家に帰ろうとしたところ、途中で手足のしびれと息苦しさがからだ全体をしめつけ、急いで妻に運転をかわってもらい、家に舞い戻ってようやく落ち着きをとりもどしました。
    しかし、それからというもの、いつあのような発作がやってくるかもしれないという不安におびえています。また、肩こり、息ぎれ、頭痛、疲労感、抑うつ、食欲不振が重なり、出社しても人の思惑が気になって緊張し、脈拍が速くなり、卒倒しそうな恐怖に襲われることがあります。

以上の例にもみられるように、新しい会員のおおくが症状に悩みながらも、日常生活はなんとか維持している人たちであり、あるいはまた、医師の治療をうけながら働いている人たちです。

仲間といっしょに学習する
このような神経症のかたがたが、全国各地で行なわれている集談会などへ参加するようになりますと、まず、こんなことがしだいにわかってきます。
第1に、悩んでいるのは自分だけではない、たくさんの仲間がいて、その人たちによって受けいれられているという安心感が生じてきます。
第2には、ほかの人の神経症体験を聞くことをとおして、自分の悩みを客観的にみることが容易になります。第3は、おたがいに助けあい、励ましあい、学びあうことによる理論学習の効果の促進があげられます。第4は、症状をのりこえた先輩の姿や、よくなっていく仲間に接することによって、自分もまた先輩のように立ち直れるという希望と確信がえられます。
そして第5は、やがて、できれば学習会や、集談会の自主運営にも参加することによって、症状に固着しがちな注意の外向化などが図られ、森田理論の根幹である「あるがまま」の体得がしやすくなっていきます。
なお、発見会の系統的な学習会では、テキストにもとづいて「神経質症にどうしてなるか」「治るとはどういうことか」など、7つの単元を学習します。

協力医家との連携で
いっぽう、症状のため日常生活が維持されておらず医療もうけていない人の場合や、学習方法の適応がむずかしいようなときには、もよりの発見会・協力医家に紹介することにしています。森田理論学習に適するかどうか、治療が必要かどうかの判断をしてもらうためです。
この協力医家とは、発見会の活動を理解され、神経症の診断、指導で支援をいただいている医師(カウンセラーを含む)のかたがたです。協力医家は現在、全国で150余人に達しています。

生活の発見会への入会方法や、集談会の開催場所・日時などについては、下記へお問い合わせください。
案内パンフレットもあります。
■生活の発見会(本部事務局)
〒112-0012東京都文京区大塚4-41-12
電話03-3947-1011(平日の午前9時半〜午後5時)
・生活の発見会ホームページ=http://www.hakkenkai.gr.jp/

【編集後記】
本号は、「メンタルニュース・7号」(92年10月発行)の改訂版です。なお、生活の発見会(会長・大谷鈴代、理事長・横山博)は、長年にわたる組織活動の実績が認められて、1998年に「第50回・保健文化賞」(主催・第一生命保険相互会社、後援・厚生省ほか)を受賞されました。
また同会は、ことし2000年に、森田理論の「学習運動30周年」を迎えています。

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